GDNとDSPの比較 ~今まで誰も触れなかったディスプレイ広告の話~

レスポンス効果(コンバージョンとCPA)を追求するなら、“GDN”

GDNはアドネットワークだが、DSPよりレスポンス効果が高い

「BLADE」「FreakOut」「MarketOne」「Bypass」「Logicad」「楽天DSP」「Sphere」「XrostDSP」「rocketfuel」「MediaMath」など、国内では様々なDSPが利用されていますが、正直なところ、GDNよりもレスポンス効果(コンバージョンの獲得)に強いディスプレイ広告は見たことありませんし、存在しないと思います。

GDNはDSPではなく、アドネットワークです。ただし、巨大なアドネットワークです。様々なアドネットワークと接続でき、機会学習機能を持ち、配信を自動で最適化するDSPの方が費用対効果が高いように見えるかもしれませんが、さすがにGoogleは別格と考えた方が良いです。

GDNだけで、国内のインターネットユーザーの約90%にリーチできる圧倒的なカバー率があるので、そもそも他のネットワークと接続する必要がありません。加えて、GDNは“Google管理下にあるアドネットワーク”なので、配信面の管理が厳重であり、広告が配信されるWebページの品質が高いのです。だからこそ、CPC課金という課金形態もとれるのではないでしょうか?CPC課金の強みは広告主にとって大きく、eCPMに換算して比較すると分かりますが、コスト面の優位性はDSPよりも高くなります。

圧倒的なリーチ数があるからこそ、アドネットワークという形態がとれ、それによってアドネットワークの良さである“配信面の管理のしやすさ”が強みとなります。

逆にDSPでは、個々のネットワークがGDNと比較すると、どうしても小さくなってしまうため、多くのネットワークと繋がる必要があります。その分“配信面が管理しにくい”のです。

GDNのターゲティング機能の種類

さらに、GDNには精度が高く、多彩なターゲティング機能が多数あります。これをうまく組み合わせて使うことで、広告効果を大幅に高めることができます。具体的なターゲティング機能の説明と活用方法は、関連記事をご覧ください。

他サービスとの連携・効果の可視化を優先するなら“DSP”

DSPはDMPや3PASと連携しやすい

レスポンス効果はGDNに負けますが、DSPにも強みがあります。その1つが他サービスとの連携です。特にアトリビューション分析などを行うには、3PASやDMPとの連携が必要になりますが、GDNでは許可された一部のサービスでないとタグ入稿ができないので、Google以外の広告や他のWeb施策との横串の効果測定が難しいという問題があります。

また、GDNのみを使用するにしても「コンバージョン日時ではなく、コンバージョンに寄与した最後のクリックの日時が“CV日時”となる」という特殊なコンバージョンカウント方法がリスティング広告と同様に存在します。他のWeb施策と同様のルールでコンバージョン計測したい広告主にって、このGoogleの仕様はかなりのマイナスです。

Google サードパーティ ポリシー問題も、DSPなら大丈夫

さらに、Googleは2015年1月より、DSPベンダーがサードバーティのDMPピクセルを利用してGDNで広告配信を行うことを禁止しました。これにより、Googleに認可された3PASなどを導入しない限り、GDNと他メディアを含めたアトリビューション分析は、ほぼ不可能となりました。DSPであればそのようなことはなく、多くのDMPや3PASサービスと繋がることができるので、Webプロモーション全体の効果の可視化が可能です。

やはり、正確な効果測定を行うには「DSP×DMP」OR「DSP×3PAS」の組み合わせがベストです。

システムの柔軟性が高いので、ブランディング広告の効果測定にも強い

ディスプレイ広告には「レスポンス広告としての役割」「ブランディング広告としての役割」の2つの役割があります。DSPと他サービスとの連携により、アトリビューション分析(=レスポンス効果の可視化)ができることがDSPの強みであることは説明しましたが、ブランディング広告の効果測定方法でもDSPに軍配が上がります。

インバナーサーベイとリードバナーアンケート、ブランドリフト調査の新手法の解説方法に書きましたが、ブランディング広告の役割を持ったディスプレイ広告の効果測定方法は3つあり、「リードバナーアンケート」「インバナーサーベイ」「従来型リサーチ(市場調査会社のパネルを使ったアンケート)」です。

従来型リサーチであればGDNでも可能ですが、「リードバナーアンケート」「インバナーサーベイ」では、広告接触者と非接触者を配信で分ける必要があり、これはDSPや3PASでしかできません。

【まとめ】広告効果ならGDN、システム連携・効果測定ならDSP

著者が使用しているシステムを紹介

株式会社マクロミルのWebプロモーションにおいて、使用しているシステムを参考にお伝えします。現在はGDNの他に2つのDSPと1つのDMPを導入しています。

  • DSP:MediaMath(TerminalOne)、rocketfuel
  • DMP:Pandora

GDNは、やはりコンバージョン獲得の中心です。実際にDSPと比較すると、獲得できるコンバージョンにはかなりの差があります。コンバージョン獲得だけが目的なら、これだけで十分です。もしGDNで効果が出せていないなら、ターゲティングの設定が甘い可能性があるので、GDNのターゲティングの種類と活用方法を解説をご覧ください。こちらの記事を読んでいただければ、GDNをかなり使いこなせるようになると思います。GDNはあくまでアドネットワークなので、運用スキルが効果にダイレクトに影響します。

MediaMathは、国内では取り扱っている代理店が少ないらしいですが、USではよく名前が出ているDSPです。オプティマイズのロジックが優れていることで有名で、これ以前に導入していた複数のDSPよりも大幅に効果が上がりました。細かいチューニングができるので、ページ階層別、フリークエンシー別、リーセンシー別など、ピンポイントの攻めという位置づけで運用しています。ちなみに、楽天DSPの裏側はこれです。

rocketfuelは、NASA出身のコンピューター科学者等による独自AIを使ったアルゴリズム型のDSPです。正直、ブラックボックス過ぎてよく分かりません。なんかすごい数の計算式が回っているらしいです。運用者は「予算」と「目標CPA」くらいしか設定できません。あとはAI任せです。ただし、「本当にコンバージョンがよく獲得できる」ので利用しています。また、ビッドレスポンスがDSPの中では速く、同じ枠で他DSPと競合した場合、RTBの仕組み上、有利になります(ビットレスポンスの速さはSSPの落札決定要因の1つになっている)。

※ただ、コンバージョンレポートがデタラメです。実際のコンバージョンの10倍くらいの数字がレポートに出ていました。これを導入する場合はDMPを導入して、他の施策と合わせてフラットに評価できる環境が必須です。

Pandoraは、アクセス解析や広告効果測定以外でも利用していますが、メインはアトリビューション分析です。アトリビューション分析について、著者が考案した自動アトリビューション分析モデルを搭載しています。これにより、いつでもWebプロモーション施策全体の効果(GDNを除く)が見え、アロケーションの改善に役立てています。

こちらのアトリビューション分析モデルは、Pandoraを導入されている方は、無料でご利用いただけます。詳細はアトリビューション分析の手順と、新・分析モデル「MIWモデル」をご確認ください。

  • 分析モデル名:Media Interaction Weight Back model
  • 分析モデル名(カナ):メディアインタラクションウェイトバックモデル
  • 略称:MIWモデル
    • 概要
      • CVユーザーの接触したメディアの種類やフリークエンシーに応じて、ウェイト値(変数)をFQ閾値単位でセットできる。
      • 優先メディアを設定でき、これに接触した場合、他のメディアのスコアを排他できる(他メディアのCVを引き上げてしまう、リワード広告などを想定)。
      • ウェイト値から算出したアトリビューションスコアに対して、複数の掛け合わせモデルを組み合わせスコアリングできる。
      • 上記を自動算出する。

広告効果ならGDN、システム連携・効果測定ならDSP

Webマーケターのミッションは、まずはコンバージョンを獲得することだと思っています。これを目的とするなら、ディスプレイ広告を導入する際、レスポンス効果の高いGDNがまず検討媒体としてあがってくるはずです。ただし、それがアドテクブームと広告主の判断ミス(比較検討してサービスを選んでいない)によって、DSPに流れているのではないかとちょっと感じています。

もちろん、それがDSPの強みを理解して「効果測定を優先したい」「システム連携を優先したい」などの理由があってなら問題ないです。しかし、「比較検討を行わなかったことによるただのサボリ」なら、これはマーケターとしてあってはいけない。

著者は、“GDNとは違う強みを持つ”という理由からDSPを導入しており、DSP導入に関してはポジティブに考えています。アドテク業界に関わる者として、DSPを導入する企業がこれからも増えて欲しいとも思っていますが、各システムの“強み”や“違い”は、同じ広告主の方々に理解していただきたいと思い、今回の記事を書かせていただきました。

DSP事業者にしたら、GDNのレスポンス効果は脅威です。あまり話題にしたくはないでしょう。確かにDSPの強みは魅力的ですが、ダイレクトレスポンス重視のマーケターの数は多いですし、DSPのシステム連携や効果測定の強みを理解できるマーケターのリテラシーは高めです。

ビジネスである以上、このようにDSP事業者からは話しづらい話もあります。このような部分に興味を持って、ツッコミを入れていくのは広告主の役目・責任だと思っています。

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この記事の著者

広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。

2008年、株式会社マクロミルに入社。現在は同企業のオンラインマーケティング部門の責任者として、デジタルマーケティングを推進。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。

2021年、公正取引委員会 デジタルスペシャルアドバイザーを受嘱。デジタル市場における競争政策の的確な運営のために活動。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)

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