3PAS(第三者配信)の仕組みと特徴

3PAS(第三者配信)の概要とビュースルーコンバージョンの意義

狭義の第三者配信

広告主はDSPなどのプログラマティックな広告以外にも、リスティング広告、純広告、アフィリエイト広告など多くのWeb広告を出稿。さらには、SEO(Search Engine Optimization)など広告以外のマーケティング施策も実施していたため、それらを横断して管理・効果測定したいというニーズを持っていました。これに応えることができるのが3PASです。

アドネットワークやDSPもメディアに直接広告を配信せずに、アドサーバーという第三者を介して広告を配信するという意味では第三者配信(3rd Party Ad Serving)です。

ここで言う第三者配信はこのことではなく、複数のメディアの広告を一括管理して配信・効果測定を行うアドサーバー(第三者配信アドサーバー)、つまりサーバー自体のことを指し、前述の第三者配信よりも狭義の第三者配信のことです。

以後はこの狭義の第三者配信のことを、広い意味の第三者配信と区別するために3PASと呼びます。

まずは広告本来の意味、クリックが重要視されてきた背景について考えてみる

3PASを使わずとも、SiteCatalystなどの高機能なアクセス解析ソフトを使用すれば、リンク先URLのパラメータを分けることで、CVユーザーのクリックベースの広告接触経路を、メディアを跨いで効果測定を行うことは可能でした。

しかし、広告本来の価値はクリックではありません。Webがなかった時代から広告というのは存在していました。スーパーマーケットのPOP、レストランの看板、OOH、TVCM、これらはどれも広告ですが、クリックなんてありません(当然ですが)。

Web広告の登場によってクリックという指標が生まれましたが、これが重要視された背景には以下のようなことが挙げられます。

  1. Webは“目的を持ったユーザー”“目的のサイトに辿り着くために”利用する
  2. ユーザーの視線は目的のサイトに向いているため、広告を見ない ⇒ 広告を表示したところで、その広告にオフライン広告ほどの価値はない
  3. 広告が表示されるだけで課金されるのはおかしい
  4. 広告に興味を持ったユーザーに“広告が確実に届いた”という指標が必要
  5. 「クリック」という指標がその役目を担う

では、現在のWebはどうでしょうか?

インターネット普及率はWeb広告が登場した時代よりも確実に高くなってきており、ブログやSNS、スマートフォンの登場に代表される「Webの日常化」は進んでいます。必要な情報を調べるだけなく、生活用品を購入したり、誰かとコミュニケーションをとったり、「Webの中での行動」の幅が広がり、「オフラインでの行動」に近くなってきたと言えます。

簡単に言うと、「インターネットが今までよりも“ゆるく”使われるようになってきた」。そうであれば、オフライン広告と同様に、Webでも「広告を見せること自体を評価しても良いフェーズ」に入ってきたのではないかと思います。

また、それだけでなく、リターゲティングやオーデェエンスターゲティングなどのターゲティング技術、クリエイティブの表現力(動画広告、インタラクティブ広告など)、アドベリフィケーションなどのテクノロジーの進化により、「広告表示の価値が上がっている」「ビュースルーコンバージョンを無視できない」と感じています。

3PAS(第三者配信アドサーバー)の仕組みと特徴

3PASの仕組みと特徴

DSPやアドエクスチェンジと違って、3PASには広告枠の買い付けや配信のオプティマイズ機能などはありません。その価値は「リッチメディア配信」「クリエイティブ管理」「メディアを横断した効果測定」にあります。

今までは「リスティング広告」「ディスプレイ広告」「純広告」など個別に効果測定を行う必要がありましたが、これを利用することにより配信から効果測定までを一元管理することが可能で、複数のメディアを横断して管理できます。

効果測定のメインは「SEO(自然検索)」「リスティング広告」「ディスプレイ広告」になりますが、「純広告」も3PAS経由で配信できるものであれば他の広告と同様に効果測定が行えます。

3PASを使った広告配信

効果測定の強み

メディアを跨いだ効果測定が行えるということは、「今までの個別効果測定が1回で済むから良い」というところに価値があるわけではありません。その価値はWeb全体のポートフォリオが組める点です。つまり、本当に価値のある広告を判断し、アロケーションをコントロールできることにあります。

CVユーザーの広告接触パスが分かることで、「コンバージョンに貢献した広告媒体」「コンバージョンさせるためにかかった広告コスト」が分かるため、適正な予算配分が行えます。

メディアを横断して広告のコンバージョンへの貢献度を正当に評価するための分析手法を「アトリビューション分析」と言います。3PASの登場によって、アトリビューション分析ができるようになりました。

アトリビューション分析については、以下のページで解説しています。

実際に著者も所属する株式会社マクロミルのBtoBのアカウントで3PASを導入したことがありますが、導入の際は、3PASの“配信の強み”より、“効果測定の強み”が決め手になりました。

配信の強み

リッチアド(ビデオ広告や、インタクティブ広告など)の配信や、フリークエンシーのコントロールができることが3PASの強みです。

リッチアドは今までレスポンス目的メインで利用されていたインターネット広告に、ブランディングという新しい価値を付加してくれるクリエイティブであり、今後のインターネット広告業界を進化・加速させていくためのきっかけになるとも思っています。

シーケンス配信(1人のターゲットのフリークエンシーをコントロールして、クリエイティブを段階的に切り替える配信手法)ができれば、ユーザーの広告表示回数によってクリエイティブの切り替えなどができます。

例えば、「○○回クリエイティブAを表示したユーザーはブランド認知率が△△%にアップする」「ブランド認知率が△△% に達した場合、より購買に直結するメッセージのクリエイティブBを表示することでクロージング率が高まる」というような示唆をマーケティングリサーチなどで得ている場合、ユーザーが接触するクリエイティブのシナリオを設計し、フリークエンシーごとにクリエイティブを動的に切り替え、クロージング率を高めることが可能です。

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この記事の著者

広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。

2008年、株式会社マクロミルに入社。現在は同企業のオンラインマーケティング部門の責任者として、デジタルマーケティングを推進。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。

2021年、公正取引委員会 デジタルスペシャルアドバイザーを受嘱。デジタル市場における競争政策の的確な運営のために活動。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)

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