DMP(データマネジメントプラットフォーム)の仕組みと特徴

データマネジメントの最終形態!? 何でもできそうだが、誰でもはできないプラットフォーム

DMP(データマネジメントプラットフォーム)の概要

DMP(Data Management Platform)とは、インターネット上の様々なサーバーに蓄積されるビッグデータや自社サイトのログデータなどを一元管理、分析し、最終的に広告配信などのアクションプランの最適化を実現するためのプラットフォームのことです。

DMPは全く新しいシステムということではなく、DMPと同じような目的・機能を持つシステムにDWH(Data WareHouse)が昔からあります。これにオーディエンスデータという外部データが加わり、さらに分析したデータを広告配信などの施策に、より落としやすくなったシステムがDMPというイメージです。

DMPは「オープンDMP」「プライベートDMP」の2種類に分類できます。

オープンDMP

「オープンDMP」は、Webサイト訪問ユーザーのデモグラ情報や、興味関心・嗜好性等などの外部のオーディエンスデータとデータエクスチェンジさせることができるクラウド型のデータプラットフォーム(様々なWebサイトのオーディエンスデータを集約して整理するデータ格納庫のようなもの)のことです。

プライベートDMP

「プライベートDMP」は、オープンDMPの領域に加え、企業独自ののマーケティングデータ(購買情報、ユーザープロファイル、各種プロモーションの結果等)を集約し、これを外部のオーディエンス情報とシンクさせ構築するプラットフォームです。CRMデータに、従来では取得することが難しかった外部データを組み合わせたものだとすると、理解しやすいと思います。データ格納先が企業側にある点がポイントです。

DMPによるデータマネジメント

※2015年10月現在、「オープン」「プライベート」という括りではDMPをカテゴライズしづらくなってきました。そこで、国内のDMPを「インプット(データソース)」と「アウトプット(利用目的)」の2軸でマッピングした表を関連記事で掲載しています。

DMPの活用事例と課題

DMPの活用事例(マーケティング施策を打つための準備)

DMP導入のメリットは、アクセス解析や自社の顧客情報だけでは取得できないWeb上の様々なデータ(3rd Partyデータ)を用いて広告配信を行うことや、3rd Partyデータと自社が保有する顧客データを組み合わせて、パーソナル情報を充実させ、広告以外も含めて様々なマーケティング活動に活かせるところにあります。

株式会社マクロミルにおいて著者が実施した、DMPを使った会員サイトのマーケティング事例をお話しします。

DMPによるセグメント作成(マーケティング施策を打つための準備)
  • Webサイト来訪者をDMPを使って「会員」「非会員」に分類
    • 会員のみがアクセスできるページにDMPタグを設置し、「会員用Cookie」を発行
      • 「会員用Cookie」を持っているユーザーを“会員”と定義
      • 「会員用Cookie」を持たないユーザーを“非会員”と定義
  • 非会員をオーディエンスデータを用いて「性別×年代(オーディエンスデータによる推測)」でセグメント

DMPの活用事例(マーケティング施策の実施)

“会員”がWebサイトに訪問した際は、「お友達紹介バナー」を掲載し、“会員が自分の友達を紹介して、その友達が会員登録するとポイントが付与されるキャンペーン”を実施しました。

“非会員”がWebサイトに訪問した際は、「性別」×「年代」で12パターンのKV(キービジュアル)を作成し、“訪問ユーザーの性年代(オーディエンス情報)に合わせたKV+新規会員登録キャンペーン訴求バナー“をユーザーの属性に合わせて動的に切り替える施策を実施しました。

つまり、DMPとLPOを組み合わせたマーケティング施策です。

これは、DMPを活用したマーケティング施策の1つの例でしかありません。マーケターの工夫次第で、これ以外にも様々なマーケティング施策が考えられると思います。

DMPの課題

こういった事例をお話しすると、プライベートDMPは素晴らしいシステムに思えますが、企業側でのデータ整備の必要があるため、導入の敷居は高いです。さらにシステム面以外にも、データの取り扱いや、各部署・担当者の連携や責任の範囲、セキュリティーやプライバシーの問題など、導入までに乗り越えなくてはならない壁も多いのです。

DMPはナショナルクライアントを中心に導入が広まると考えられます。現に2013年頃から大手飲料メーカーの導入事例なども出てきました。ただし、前述の通り、導入の敷居は決して低いものではありません。特に自社データの連携の部分の敷居は高いように感じます。

自社データ連携の部分はプライベートDMPにおいて必須ですが、導入側のデータ整備、各担当部署との調整等が必要となってくるため、DMP事業者だけでは解決できません。DMP事業者は単にDMPというシステムを売るのではなく、クライアントへのシステム導入~データマネジメントの方法のレクチャーまでコンサルティング的な役割を果たす必要があります。プライベートDMPの導入は広告主だけでなく、それ以外のマーケティング担当や、システム部など、クライアントの会社の様々な部門が関わります。

むしろ、これらを行わずに、クライアント側がDMPを使いこなせるとは到底思えません。

DMPは「データマネジメントプラットフォーム」として活用できるかが鍵

DMPの将来像と普及のポイント

上記のようなクライアント側の負荷を下げるためにも、DMPの多機能化(DMP自体の機能強化)が必要だと考えます。例えば、「アクセス解析データ」について、現在は、Google AnalyticsやSiteCatalystといった自社で管理しているアクセス解析ツールのデータをDMPに取り込み、管理・他データとマージするのが一般的かもしれません。しかし、機能としてはDMPでもカバーできる領域です。

現在のDMPは、データの蓄積には優れていますが、それを活用するための仕組みはまだまだ弱いという印象です。クライアントの限られた予算の中から、アドオンで“計測ツールとしてのDMP”を導入することは、大手企業でないと難しいでしょう。

もちろん、上記のアクセス解析ツールのようなUIや機能を実装するとなると、かなりのコストと時間がかかりますが、クライアント側からするとシステム一元化によるコストメリットもあります。また、DMPで直接アクセス解析できる方が利便性が高く、オーディエンスデータを使ったアクセス解析などの可能性も広がります。

単体での多機能化ができないのであれば、マーケティングオートメーションなどの、“アクションに強い”システムと繋がり、この領域をカバーすべきです。

もう1つのポイントは、DMPとデータエクスチェンジできる外部データの拡充(オーディエンスデータの流通量と品質)です。例えば、「購買データ」や「マス広告の視聴データ」など、様々なマーケティングデータがデータベース化されていけば、これとデータエクスチェンジできるDMPの価値は今よりも上がるはずです(もちろんプライバシーの問題は考慮する必要がありますが)。

DMPの将来像

まとめると、DMPの価値を上げるには「DMPの多機能化」と「DMPにエクスチェンジできる外部データの拡充」がポイントになってきます。クライアントが個別に導入しているツールの機能を極力DMP自体に持たせ、コストメリットと導入負荷を軽減する。様々なマーケティングデータを外部で構築し、それをDMPとデータエクスチェンジさせ、“マーケティングプラットフォーム”としての価値を高めていく。今後のDMPに期待しています。

DMP導入判断のポイントは「データからアクションプランが作れるか」

DMPは広告配信のためだけのシステムではありません。いわば“箱”です。DMPを導入するということは、この箱の中に様々なマーケティングを集約していき、データを切り口に徹底的な「ユーザー把握(デモグラデータ、サイコグラフィックデータ、購買データ、広告への反応、ソーシャルデータ)」を行い、“個”または“セグメント化されたユーザー”に対して、様々なマーケティングアプローチを検討し、適切な方法でアクションしていくということです。

このアクションというのは、何も広告だけとは限りません。戦略PR、キャンペーン告知、Webサイトの改善、商品やサービス開発、ターゲット市場の見直しなども考えられます。様々なマーケティングデータがDMPに集約される分、アウトプットも多岐にわたります。

アクションに繋がらないDMP導入は何の意味もありません。

DMPを導入する前に、「DMPに蓄積されたデータから本当にアクションプランが作れるか(打ち手が見えた時に実行できるか?関係部署を動かせるか?)」ということをぜひ考えていただきたいです。もちろん、Web広告以外の打ち手も含めて、マーケティングプランを作れるか?ということです。

少なくとも、各キャンペーンを担当する部署がCVやCPAを競い合っているような会社では、まだ導入できるようなフェーズではない気がします。Webマーケティングにおいて、1つの施策は高い確率で他の施策に影響しています。それを明らかにし、適切なマーケティングアプローチをターゲットに合わせて選択する、かつ、マーケティングのPDCAを高速化させるためのプラットフォームがDMPです。

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この記事の著者

広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。

2008年、株式会社マクロミルに入社。現在は同企業のオンラインマーケティング部門の責任者として、デジタルマーケティングを推進。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。

2021年、公正取引委員会 デジタルスペシャルアドバイザーを受嘱。デジタル市場における競争政策の的確な運営のために活動。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)

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