ネイティブアドと記事広告の違い(ネイティブ広告の解説)

ネイティブアド(ネイティブ広告)は広告フォーマットではなく、“概念”です

結論から言うと、ネイティブアド(ネイティブ広告)は記事広告とは違います。・・・・というより、そもそもレイヤーが違う言葉です。

記事広告というのはコンテンツメディアに掲載する記事体裁型の広告のことで、具体的な広告フォーマットのことを指します。

ネイティブアドとは「広告掲載面に広告を自然に溶け込ませることで、“ユーザーにコンテンツの一部として見てもらう”ことを目的とした広告」のことで、具体的な広告フォーマットを指すのではなく、いわば概念です。これを実現する具体的な広告フォーマットとして、記事広告やインフィード広告などが存在すると考えれば、分かりやすいと思います。

記事広告のサンプル インフィード広告のサンプル

ネイティブアドの6つの分類(広告フォーマット)

ネイティブアドにおける広告フォーマットの種類

ネイティブアドの広告フォーマットについて、USの広告業界団体であるIAB(Interactive Advertising Bureau)が発表している「IABネイティブアド・プレイブック」では6つに分類されています。

参考書籍:図解 マーケティングの教科書(日経BP社)

インフィード型
Webサイトやアプリ(画面の上から下に読み進めていくデザイン)のコンテンツとコンテンツの間に表示される体裁の広告のことです。FacebookやTwitterなどのSNSや、キュレーションメディア、ニュースアプリなどでよく利用されています。最近では、テキストやバナーだけでなく、動画などのコンテンツも配信できるメディアも珍しくありません。また、ビジネスメディアでもインフィード広告を見かけるようになりました。
検索連動型
リスティング広告です。検索結果画面上に検索結果と同じようなフォーマットで広告表示されるため、こちらも「ネイティブ広告」に分類されています。ただし、検索連動型広告をネイティブアドとして扱う場合、誘導先がLPではなく自然検索と同様のコンテンツであることが条件です。
レコメンドウィジェット型
レコメンド配信サービスを使用して、広告配信したい記事などをレコメンド欄のあるサイトに表示する形になります。具体的な例として、ニュースサイトの記事下に「おすすめ記事」や「関連記事」として、広告を含むような手法です。ユーザーによって表示される広告がカスタマイズされるため、面ではなく、人をターゲティングした広告になります。ページ下に表示されることが多いので、視認性は他の広告フォーマットよりも低い場合が多いです。
プロモートリスティング型
「Amazon」「楽天」などのECサイトや、「ぐるなび」「食べログ」などの情報サイトで見られる、検索結果の上位にPRで表示されている広告です。ユーザーが検索したワードに合わせて、実際の検索結果と同じようなフォーマットで表示される広告です。上位に表示されているので目に留まりやすいですが、検索という行動は、ユーザーの“能動的で具体的な目的を持ったアクション”なので、それに応えられるもの(クリエイティブやリンク先ページ)でないといけません。
ネイティブ要素を持つインアド型(IABスタンダード)
ディスプレイ広告の枠内に、コンテンツ型の広告を表示するタイプ。ただし、配信する枠はIABが定めるディスプレイ広告枠の基準をクリアする必要があります。GDNのターゲティングメニューを例にすると、「トピックーターゲット」「コンテンツターゲット」「プレースメント」が面をターゲティングしているので、配信するクリエイティブ次第ではネイティブアドになるかもしれません。
カスタム型
5つのカテゴリに当てはまらない手法で、「記事広告」や「LINEの企業スタンプ」はこのカテゴリになります。媒体ごとの特性や体裁に合っていることが前提条件です。

広告クリエイティブだけが評価対象ではない『ネイティブアドの条件』

上の「ネイティブアドの6つの分類」は、ネイティブアドの広告フォーマットのことを指していますが、今度は「ネイティブアドの条件」についてです。この条件が満たされていないと、たとえネイティブアドの分類に当てはまっても、ネイティブアドとは呼べません。

FORM
ネイティブ広告掲載面のデザインについての条件。ネイティブアドが掲載される形態は、メディア本体の記事と同じデザイン(広告掲載位置やページのカラーなど)となっているか。
FUNCTION
ネイティブ広告掲載面の機能についての条件。ネイティブアドが設置されるページの機能は、そのメディアの他の機能と同様のものか(ネイティブアドの掲載面が掲載先メディア本体の機能を持っているか)。同じようなコンテンツ体験をユーザーに提供するか。
INTEGRATION
ネイティブ広告の広告ユニット/広告表示方法についての条件。ネイティブアドの広告ユニットは、周りのコンテンツと同じように表示されるか(リンク押下、ロールオーバー時の挙動などが、他コンテンツと同じか)。
BUYING&TARGETING
ネイティブ広告の配信方法についての条件。ネイティブアドの掲載箇所は、メディアの全ページではなく、特定のページやセクションを指定して表示(広告配信)することができるか。
MEASUREMENT
ネイティブ広告の効果測定についての条件。ネイティブアドの広告効果測定は、クリックやコンバージョンなどのレスポンス広告の効果指標ではなく、エンゲージメント(シェア、閲覧時間など)で計測されているか。例)インプレッション、シェア数、広告閲覧時間など。
DISCLOSURE
ネイティブ広告のPR表記についての条件。ネイティブアドの掲載面には、広告であることが明記されており、ユーザーが広告ということを認識できるか。

ネイティブアドアドと謳っている広告の中で、上記の条件に該当する広告は、実際にどのくらいあるのか。。。特に6つ目の「PR表記」はよく話題になりますね。メディア側も収益を確保するために、これを表記したくないというのが正直なところでしょう。

ネイティブアドが抱えるリスク

ネイティブアドは諸刃の剣

ネイティブアドはデザインや機能を媒体に馴染ませて広告を掲載するので、コンテンツを見に来たユーザーからすると、中身(広告のリンク先)が“売り込み色が強すぎるページ”だったり、“広告掲載面との関連性が低いページ”だったりすると、広告を嫌うだけでなく、メディアへの不信感にも繋がります。

ネイティブアドを提供する某メディアは、リンク先ページの内容も含めて、全て目視でチェックするそうです。ネイティブアドはユーザーに見てもらいやすい方法で掲載する分、このくらいのユーザーに対する配慮がないと、「単にユーザーの行動を邪魔するだけの広告」になってしまいます。

ネイティブアドの目的は「広告をコンテンツと同様に見てもらう」ことですが、本当にユーザーがその広告をコンテンツとしてクリックした時に、ちゃんと読んでもらえる内容になっているか、というのが大事です。

adtech tokyo 2013の公式カンファレンスで・・・

そういえば、2013年のアドテックでジャム・ジャパン・マーケティングの大柴ひさみさんが、

「ユーザーは広告が嫌いなのではない、邪魔されることが嫌いなだけ。
(中略)邪魔をされると広告が嫌いになる。」

と、公式セッションで話されていました。

このセッションはネイティブアドにフォーカスしたものではなかったのですが、特にネイティブアドにおいては、この点をしっかり考慮する必要があると思いました。

  • ネイティブアドは、ユーザーの行動を“邪魔しやすい”広告です(掲載箇所の話)。
  • そして、広告リンク先のコンテンツが悪ければ、ユーザーは“騙された”と感じます(コンテンツの質の話)。

その瞬間的なマイナスのユーザー体験は、その広告や掲載メディアだけでなく、世の中の全てのオンライン広告に影響する可能性があると思っています。

著者のネイティブ広告に対する考え

著者はネイティブアドに対して、今のところ、肯定も批判もありません。しかし、今はバズワードみたいになっているネイティブアドに、このようなリスクと責任があることを、広告主とメディアの方々の両方に知っておいて欲しいと思うのです。

このようなレポートが世の中に出ていることが非常に残念です↓

ネイティブアドがただのステマになるか、コンテンツの一部として認めてもらえるか、広告業界に関わる私たちの使い方次第だと思います。

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この記事の著者

広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。

2008年、株式会社マクロミルに入社。現在は同企業のオンラインマーケティング部門の責任者として、デジタルマーケティングを推進。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。

2021年、公正取引委員会 デジタルスペシャルアドバイザーを受嘱。デジタル市場における競争政策の的確な運営のために活動。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)

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