DSPの広告枠品質調査結果 ~アドベリだけではどうにもならない現状~

アドテク初期の頃と比べて広告枠の品質は改善されたのか?

初期のアドネットワークの頃を思い出してみてください。初期のアドネットワークは、余り在庫や中小サイトの広告枠が中心だったため、ブランドイメージを低下させるようなサイトに掲載されたり、媒体情報が開示できないことも多く、大手企業にとってはまだまだ掲載に踏み切れない状態でした。

テクノロジーが進化し、アドベリフィケーションというブランド保護の仕組みも登場し、今や大手企業もDSPなどのプログラマティックな広告配信を行う時代です。では、広告枠の品質は本当にクリアになったのでしょうか?実際に調べてみました。

DSP配信枠の品質調査 2015年5月

調査の概要 Digital Marketing Lab調べ

  • 調査期間
    • 2015年4月21日~2015年5月1日
  • 調査内容
    • 某大手DSPにおける、配信先Webサイトのチェック。国内ユーザーをターゲットとした商材の広告キャンペーンにおいて、実際に広告配信を行い、6,277件のWebサイトの内容を目視で確認(インプレッション降順で抽出)。
    • 以下に該当するWebサイトを「ブラックリスト」と定義し、全配信におけるブラックリスト(広告主視点で考えた時に、どの業種・業態においても、広告掲載を行いたくないであろうWebサイト)の割合を算出。
      • アダルトサイト、海外サイト、アクセス不可(サイト消失)、広告掲載位置が不適切(間違いクリックを誘発させるデザインなど)、コンテンツの品質・品格に問題アリ(他者への誹謗中傷、違法性など)
      • ※国内でも一般的に利用されている海外サイトはブラックリストに含めない。
    • ブラックリストの定義には当てはまらないが、デザインのクオリティの低さや、内容の薄さが目立つWebサイトを「グレーリスト」と定義し、全配信におけるグレーリストの割合を算出。
    • 広告が掲載されても問題ないWebサイト(ブラックリスト、グレーリストの定義に当てはまらないWebサイト)を「ホワイトリスト」と定義し、全配信におけるホワイトリストの割合を算出。

利用したDSPは、配信オプティマイズ機能に優れていることが評価されており、国内でも広く利用されているDSPです。また、アドベリフィケーションサービスによるサイト精査実施後のドメインに対して調査しました。

調査結果と所感

調査結果

6,277サイト中・・
  • ホワイトリスト:1,488(23.7%)
  • グレーリスト:2,788(44.4%)
  • ブラックリスト:2,001(31.9%)
    • アダルトサイト:10(0.2%)
    • 海外サイト:1,326(21.1%)
    • アクセス不可:565(9.0%)
    • 広告掲載位置が不適切:3(0.0%)
    • コンテンツの品質・品格に問題アリ:97(1.5%)

DSPの広告枠品質調査結果

広告主としての所感

アドベリフィケーションでのサイト精査後のドメインを配信対象としていたためか、「アダルトサイト」や「広告掲載位置が不適切なWebサイト」への配信はほとんどありませんでした。

しかし、国内サービスのキャンペーンでありながら、海外サイトへの広告配信が異様に多く、またアクセスできない架空のWebサイトなどへの配信量も無視できません。

全体として、ブラックリストが30%超えているという結果は、広告主として非常に残念というほかないでしょう。グレーリストを除くと、本当に配信したいと思えるWebサイトは23.7%しか残りませんでした。

DSPでの広告配信を止めることはできない

しかし、DSPを使った広告配信が効率的であり、かつ、高いレスポンス効果を出していることも事実です(品質の悪いサイトは多いが、それを差し引いても低単価で広告配信ができる仕組みは強力)。そのため、マーケターとして成果を出さないといけない立場の著者としては、DSPでの広告配信を止めることはないでしょう。

ただ、今回はじめて、広告配信されるWebサイトを自分の目で細かくチェックしてみて、結果に対するショックが大きかったということです。

アドベリフィケーションで、広告枠の品質課題を解決することは、ほぼ無理に等しい

実際に調査してみて、アドベリフィケーションツールで広告枠の品質をクリアにすることは無理だと、改めて痛感しました。システム的なチェックだけでは判断できない部分も多く、人の目によるチェックは人的コストが掛かりすぎます。今回は3名でチェックしましたが、約6,000のサイトをチェックするために、100時間以上掛かっています。

日々無数に増えては消えていく広告枠を適切に評価し精査し続けていくには、アドベリフィケーションの仕組みでは厳しいでしょう。このような背景から、“良い広告枠を集めてマーケットを作る”という、アドベリフィケーションとは発想が逆(アドベリフィケーションは“良くない広告枠を見つけて、配信対象から除外する”)のPMP(プライベートマーケットプレイス)が登場しています。

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この記事の著者

広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。

2008年、株式会社マクロミルに入社。現在は同企業のオンラインマーケティング部門の責任者として、デジタルマーケティングを推進。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。

2021年、公正取引委員会 デジタルスペシャルアドバイザーを受嘱。デジタル市場における競争政策の的確な運営のために活動。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)

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