Web広告における広告弾力性の5つの分類とアトリビューションマネジメント

アトリビューションマネジメントと広告弾力性

アトリビューション分析とは、コンバージョンに関与したメディアの貢献度を分析してスコア化することで、アトリビューション分析モデルを使って各メディアの貢献度をスコアリングします。

広告主のゴールはこの分析結果をもとに、リアロケーションを行い広告効果を最大化させることです。つまり、分析がゴールではなく、ここから適正な広告投下予算を導き出す必要があります。これがアトリビューションマネジメントです。しかし、これには大きな問題があります。

それが、「広告弾力性の問題」です。ここでは広告弾力性のパターンを5つに分類し、その違いから、アトリビューションマネジメントが単純でないことを説明します。

グラフは「X軸がCOST(広告投下量)」「Y軸がCPA(獲得効率)」「バブルの大きさがコンバージョン」です。X軸を予算増加前と予算増加後の2点に限定し、他2つの値がどう変化するかを見ていきます。

CPA固定型

広告弾力性の5つの分類

CPA固定型

広告投下量が増加すると、CPAが変わらずにCVが増加するのが、CPA固定型の特徴です。

成果報酬型のアフィリエイト広告などがこれにあたります。広告から発生する利益額が広告コストより高い場合、広告投下量を増やすことで利益が増加します。成果が保障されているので、広告主にとっては出稿しやすいタイプの広告です。しかし、成果報酬額(CPA)を増やすなどしない限り、出稿できる量には上限があり、この型を保つことは難しくなります。

CPA固定型

CPA比例型

広告投下量が増加すると、CVとCPAのどちらも増加するのが、CPA比例型の特徴です。

獲得できるCVのボリュームに対して、許容できるCPAを見極めることが重要であり、(広告運用のチューニングなどにより)成熟した運用型広告では、最終的にこの形になることが多くあります。

CPA比例型

適正予算型

広告投下量が増加すると、CVが増加し、さらにCPAも割安になる理想的な形が、適正予算型の特徴です。

DSPなどの機械学習の機能を持つシステムを使った広告配信では、初期は学習の期間が必要なため、CPAが割高になり、オプティマイズが効き始めるとCPAが下がり、適正予算型の形をとります。しかし、この形をずっと維持することはなく、最終的にはCPA比例型、CV上限型、CV反比例型などに移行していきます。

適正予算型

CV上限型

広告投下量が増加してもCVの変化がない。つまり、CVは変わらずCPAが悪化するというのが、CV上限型の特徴です。

これは、この広告から獲得できるCVが既に上限に達しているということを意味します。CPAが悪化しない広告投下量のラインの見極めが重要となります。

CV上限型

CV反比例型

CPAが悪化しすぎたことにより、広告投下量を増やすと逆にCVが減少するというのが、CV反比例型の特徴です。

例えば、リスティング広告のビッグワードに入札している場合、競合の入札などによってCPCが急激に高騰すると、この形になるリスクがあります。

CV反比例型

広告弾力性から考える、アトリビューションマネジメント

1つの広告は複数の広告弾力性を持つ

広告弾力性を5つに分類しましたが、これは広告単位で分類できるものではなく、様々な要因が絡んできます。

DSPを使った広告配信を例にしてみます。

広告配信を始めた初期は、十分なデータが無いのでDSPの強みである配信オプティマイズが効きづらくCPAは高めになります。

配信結果データが蓄積され、システムの学習が進むとオプティマイズが効いてきて、広告投下量が増加するとCVが増加し、かつ、CPAが下がります(【適正予算型】)。

ここから広告投下量を増やすことでCVは増加しますが、初期よりも獲得効率が悪い層(掲載面やオーディエンス)からCVを持ってくることになり、CPAは上がります(【CPA比例型】)。

さらに、そのまま広告投下量を増やし続けると、刈り取れるユーザーが減少し【CV上限型】に。この時に競合の入札額が上がり市場入札価格が高騰するなどの環境の変化が発生すれば、【CV反比例型】になる可能性もあります。

広告弾力性を変化させる変数

このように、1つの広告でも配信を開始してからデータが蓄積されるまでの時間、広告投下量、外部環境の変化などで、様々な弾力性の形をとります。さらには、クリエイティブの種類やクオリティ、ターゲティングの設定など、実際は“広告”よりも細かい単位で異なる形になるでしょう。

広告の種類/配信システム/掲載面/オーディエンス/配信時間帯/配信曜日/配信地域/配信デバイス/配信開始からの時間の経過/クリエイティブ/ランディングページ/他のキャンペーンとのリーチユーザーの重複率/競合入札額 /気象/季節/・・・

アトリビューション分析によって、「(過去に)貢献度が高い広告が何だったのか」が分かったとしても、広告弾力性を加味しなければ、「次はいくら投下するのが最適なのか」までは分かりません。

最も貢献度が高い広告が分かったとして、実はそれはCV上限型のフェーズにある広告かもしれません。

正確なアトリビューションマネジメントとは、非常に難しいのです。

アトリビューションマネジメントの価値

しかしながら、現状のアトリビューションマネジメントに意味がないということではありません。アトリビューション分析、アトリビューションマネジメントは複数メディアでのWebプロモーションが当たり前の現代において、必要不可欠です。

これは個人的な考えになりますが、アトリビューション分析、アトリビューションマネジメントでは、「配信にフィードバックできるスピード」「トライ&エラーの回数」を重視すべきです。

1インプレッションで広告枠が取引される時代において、緻密な計算によって求めた数ヵ月前の分析結果から算出したアロケーションよりも、シンプルなロジック&マーケターの経験則も混ざった直近の分析結果から導いたアロケーションの方が、次のキャンペーンの成果に繋がるケースはあるでしょう。

実際にアロケーションを何パターンも組んで試してみて、その結果から最適予算を推測することを繰り返し精度を上げていきます。シンプルですが、現状では強力な方法だと思います(マーケターのレベルに左右されるが)。そういう意味では、アタラ合同会社やFringe81株式会社が提供する成果配分モデルのアトリビューション分析は使いやすく納得できる分析モデルだと思います。

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この記事の著者

広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。

2008年、株式会社マクロミルに入社。現在は同企業のオンラインマーケティング部門の責任者として、デジタルマーケティングを推進。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。

2021年、公正取引委員会 デジタルスペシャルアドバイザーを受嘱。デジタル市場における競争政策の的確な運営のために活動。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)

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