アトリビューション分析の手順と、新・分析モデル「MIWモデル」

アトリビューション分析はシンプルに考える!

はじめに

本記事は、アトリビューション分析の具体的な手順の話と、著者が考案し、㈱オムニバス様に開発協力いただいたアトリビューション分析の新しいモデル「MIWモデル」の話になります。非常にボリュームのある内容なので、以下のページ内リンクをご活用ください。

また、事前にアトリビューション分析の基礎『アトリビューション分析の方法』を読んでいただくと、理解しやすい内容となっています。

アトリビューション分析はあくまで「広告のレスポンス効果を可視化するための分析フレーム」です。ブランディング効果については、他の方法で計測します。ブランディング広告を実施されている方は以下の記事も合わせて読んでいただければと思います。

優秀なアトリビューション分析モデルとは何なのか?

シンプルに考えよう!

優秀なアトリビューション分析モデル
  • 「アトリビューション分析結果を基にしたリアロケーション」によって「総コンバージョン」が改善される分析モデル
  • 「アトリビューション分析結果を基にしたリアロケーション」によって「総CPA」が改善される分析モデル

つまり、各施策のアトリビューションスコアやアトリビューションCPAから、施策全体のCVやCPAを改善するための、それぞれの施策に投下すべき最適な予算が導き出せるモデルが優秀ということ。

アトリビューション分析の発端は、「既存の評価方法では各施策の本当の貢献度が評価できていない」という考えなので、アトリビューション分析で正しく施策の効果を評価できるのであれば、アロケーションが最適化され、コンバージョンやCPAが改善されるはず、ですよね?

言いたかったことは、“アトリビューション分析の結果を見て納得するだけ(貢献度の可視化だけ)”というのは意味がなく、そこからアロケーションを考え、施策全体の効果を改善するまでがアトリビューション分析の目的・存在価値であり、正しいアトリビューション分析ができていれば、それが可能だということです。

アトリビューション分析で大事な3つの要素

「継続的なトラッキング」「スコアリングの自動化」「スコアリングロジックの自由度」

アトリビューション分析では、アトリビューションスコアを使ったものから、数理モデルを駆使した複雑な分析もありますが、著者はアトリビューション分析において大事なのは、「継続的なトラッキング」「スコアリングの自動化」「スコアリングロジックの自由度」だと考えています。

この中で最も重要なのが「スコアリングロジックの自由度」。例えば、アトリビューション分析において、“広告接触”は計測できますが、“広告認知”は実際に聞かない限り分かりません。このような“聞かないと分からない要素”に対しては、アンケートで実際に聴取して、その結果を分析ロジックに組み込むなどの対応方法があるので、これを実現するために、自社のサービスやキャンペーンに合わせたスコアリングロジックのカスタマイズが必要になります。

アトリビューション分析は、“分析”という割には憶測の部分も多くあります(ビッグデータ系の分析全体に言えることかもしれませんが)。さらに商材・クリエイティブ・配信面など、分析結果に影響を与える要素(かつ、その影響を正確に把握することが難しい要素)も多いのです。

著者が現在所属する会社は㈱マクロミルというリサーチ会社です。様々な分析手法に長けたリサーチャーが社内に何十人もいます。しかし、アトリビューション分析に関しては、正直なところ、大したことができないと考えています。どんなに複雑な分析方法でも、分析の基となる要素が曖昧かつ不安定なものであることには変わりないので。

おそらく「プロのリサーチャーの分析」「テスト結果からスコアリングロジックを調整する素人の分析(結果から逆算して分析ロジックをチューニングする分析)」を比較した場合、後者の方が優秀なアトリビューション分析になるのではないでしょうか。

大事なのは、「アトリビューション分析結果を基にしたリアロケーションによって、総コンバージョンが増えたか、CPAが改善されたか」という“結果”だけに注目すること(あまりロジックに拘りすぎない)。

このように、著者は「結果から逆算して分析ロジックをチューニングする方法」がアトリビューション分析では1番実用的だと考えています。

そのためには、「継続的なトラッキング」「スコアリングの自動化」「スコアリングロジックの自由度」の3つが揃っていないと、なかなかアトリビューション分析というのは実践しにくいのです。

そろそろ本題に。

この記事では、「MIWモデル」というアトリビューション分析の新しいモデルについて解説しますが、分析モデル云々よりも、アトリビューションスコア算出後の改善アクション(どうやって分析モデルをチューニングしていくか)の方が大事なので、まずは「アトリビューションスコアを算出した“後”の具体的な改善アクション」というところから説明します。

アトリビューションスコア算出後の具体的な改善アクション例

【STEP1】複数の分析モデルで、アトリビューションスコアの算出

例えば、ある週の総コンバージョンが「100件」だったとします。

広告施策にかけた予算は以下の通り
  • リスティング広告:50万
  • ディスプレイ広告:50万

この2つの施策に対して、複数のアトリビューション分析モデルで、アトリビューションスコアを算出します。

分析モデルA
  • リスティング広告:80pt
  • ディスプレイ広告:20pt
分析モデルB
  • リスティング広告:20pt
  • ディスプレイ広告:80pt

分析モデルAでは「リスティング広告の方がCVに貢献した」という結果になりました。
分析モデルBでは「ディスプレイ広告の方がCVに貢献した」という結果になりました。

優秀なアトリビューション分析モデルの定義は以下です(再掲)。

優秀なアトリビューション分析モデル
  • 「アトリビューション分析結果を基にしたリアロケーション」によって「総コンバージョン」が改善される分析モデル
  • 「アトリビューション分析結果を基にしたリアロケーション」によって「総CPA」が改善される分析モデル

よって、貢献した広告(貢献度スコアが高い広告)に予算を寄せることでアロケーションが改善され総コンバージョンが増加すると考えます。

【STEP2】投下予算の変更 ~ 広告出稿

アトリビューションCPAを参考に、貢献度の高い広告に予算を寄せます。

分析モデルAを信頼した場合のアロケーション例
  • リスティング広告:80万円(増額)
  • ディスプレイ広告:20万円(減額)
分析モデルBを信頼した場合のアロケーション例
  • リスティング広告:20万円(減額)
  • ディスプレイ広告:80万円(増額)

このアロケーションで実際に広告出稿を行います。この例では、分析前の予算100万円が、分析モデルが分かれたことにより200万円に増えていますが、同じ予算で出稿しないといけない場合は、分析モデルごとに予算を均等に配賦して出稿します。

【STEP3】結果

分析モデルごとの総コンバージョン数
  • 分析モデルAを基にした出稿 → 結果:120CV 増分CV:+20%
  • 分析モデルBを基にした出稿 → 結果:110CV 増分CV:+10%

各分析モデルに投下した予算は同じなので、この例では、分析モデルAを信頼して予算を組んだ方が、より改善度が高い結果となりました。このセットを何回か繰り返し、改善信頼度が高い分析モデルを採用することが、理想的です。

今回は、説明用に「アトリビューションスコアの比率 = 配賦予算の比率」という、かなり強引なやり方でやりましたが、大事なのは「アトリビューションスコアを参考値としてアロケーションを組み直すことで、“総コンバージョンにどう影響が出るか”」というところなので、実際の予算の引き上げ・引き下げ幅はスコアの比率と同じである必要はありません(ただし、貢献度が高いものに優先して予算を割り振る)。

このように、分析モデルで使用しているスコアリングロジックの話は一旦飛ばして、「分析モデルを適用後、結果どうなったか」だけに注目しておけば、シンプルに考えることができます。

ここからは、【STEP2】の“アトリビューションスコア”を算出する方法として、「MIWモデル」について説明します。

アトリビューション分析モデル「Media Interaction Weight Back model」

既存のアトリビューションモデリングの課題と新モデル考案の発端

『アトリビューション分析の方法』に5つの代表的な成果配分モデルを記載していますが、著者はここに書かれている5つのモデルをDMPに組み込んで、アトリビューションスコアを算出したのですが、これらの分析モデルには「CVに寄与したメディアの種類やフリークエンシーによる“貢献度の差”が考慮されていない」という問題があり、結局使用を断念しました。

【問題点1】
  • 各メディアの1接触あたり価値を同じとみなしている。
    • 例えば、動画広告の1インプレッションと、テキスト広告の1インプレッションでは、広告の印象力に差があるので貢献度にも差がある。
      • 広告の印象力の差はアンケートを実施することで聴取できる。
      • メディアの違いによる貢献度の差を加味する必要がある。
【問題点2】
  • 広告接触単位でスコアを付与するモデルなので、FQが多いメディアほどスコアが高くなる。
    • 例えば、1つの広告においてフリークエンシーによる貢献度の差はあるが、比例的に増加するものではない。
      • 実際は対数関数的増加のイメージ(例:1FQと100FQに100倍の貢献度の差はない)
      • 1FQ単位でスコアを配賦するのではなく、閾値でのスコア配賦が現実的。

2つの問題に共通して言えるのが、ユーザーの態度変容が見えない「接触(広告インプレッション)」をどう評価するか?という問題があるということです。例えば、10回広告に接触しているCVユーザーがいたとして、初回と4回目は広告を認知(記憶)したかもしれませんが、他は表示に気づいていなかったかもしれません。

どの広告インプレッションに広告効果があったかを計測するには、行動データ解析はもちろん、実際にヒアリングしたとしても難しいでしょう。なので、これの代替策として、「広告フリークエンシー単位でCVユーザーをセグメントして、広告認知(記憶)度を聴取する」ことを行いました。

そうすることで、「意味のあった広告表示(広告認知数)/実際の広告表示回数(FQ)」が分かります。そして、その広告認知率の差を「メディアごと」「フリークエンシーごと」で比較し、その差を「広告接触の価値の差」とみなし、スコアリングロジックの1つの変数として設定できるモデルを考えました。

アンケート結果

フリークエンシーによる広告認知度の違い 接触メディアによる広告認知度の違い

アンケートの結果から、「同じFQであってもメディアの違いによって広告認知率に差があること」と「フリークエンシーの変化による広告認知率の上昇幅は比例的増加ではなく、どちらかと言うと対数関数的増加の傾向があり、かつ上限があること」が分かりました。

広告認知率はクリエイティブの表現力と関係があり、フリークエンシーが多いほど増加する(対数関数的増加)

「Media Interaction Weight Back model」の概要

アンケート結果から、広告認知率と「メディアの種類(クリエイティブの種類)/フリークエンシー」には規則性があり、これをスコアリングロジックの1つの変数とすることで、既存モデルの問題点をある程度吸収できるアトリビューション分析モデルを考案しました。この分析モデルの開発は㈱オムニバス様にご協力いただき、DMP「Pandora」に実装しており、どなたでもご利用いただけます。

  • 分析モデル名:Media Interaction Weight Back model
  • 分析モデル名(カナ):メディアインタラクションウェイトバックモデル
  • 略称:MIWモデル
    • 概要
      • CVユーザーの接触したメディアの種類やフリークエンシーに応じて、ウェイト値(変数)をFQ閾値単位でセットできる。
      • 優先メディアを設定でき、これに接触した場合、他のメディアのスコアを排他できる(他メディアのCVを引き上げてしまう、リワード広告などを想定)。
      • ウェイト値から算出したアトリビューションスコアに対して、複数の掛け合わせモデルを組み合わせスコアリングできる。
      • 上記を自動算出する。

【機能1】アトリビューションスコア算出

メディア×フリークエンシー×アクション(クリック OR ビュー)でウェイト値を割り振ります。例えば、前述のアンケートの「ディスプレイ広告A」の例ではFQ41以上で広告認知率の上昇が見られないので、41以上のFQにはウェイト値が振られないようにできます。
※FQの閾値は任意で変更できるので、ウェイト値付与のFQの単位は自由に設定できます。

ディスプレイ広告AのFQあたりスコア ディスプレイ広告Aのベーススコア

これを接触する可能性がある全てのメディア(広告、自然検索、その他の施策)で設定します。複数のメディアに接触している場合、同じように接触メディアごとにベーススコアが算出されます。あとで例に使うので、ディスプレイ広告B(動画広告)のスコアを設定してみます。

動画広告は静止画と比較して、同程度のフリークエンシーで約1.5倍の認知率の差が見られたので、ウェイト値をこれに合わせます。動画広告はそんなにFQが出ていなかったので、20までのFQにウェイト値を振りました。

ディスプレイ広告BのFQあたりスコア ディスプレイ広告Bのベーススコア

同じフリークエンシーなら、FQあたりの認知率が高いメディアの方がベーススコアが高くなります(上記では動画広告)。

次に、あるユーザーのコンバージョンまでのパスを例にして、上記のウェイト値からベーススコアを算出、そして最終的なアトリビューションスコアまで算出してみます。

アトリビューションスコアの算出

ベースコアはそれぞれ「20」「23」になっていますが、これらのメディアが獲得した成果は「コンバージョン1件」なので、この貢献したメディア間のベーススコアの比率がアトリビューションスコア(アトリビューションコンバージョン)となります(端数が出ないように調整されます)。

【機能2】掛け合わせモデル

上記のモデルは、既存モデル「Linear model(全てのタッチポイントを均等に評価するモデル)」にウェイト値を取り入れたモデルなので、これを「MIW-Linear model」と呼びます。

この他に、メディア接触パスを考慮した4つのモデルがあるので、利用シーンとスコア算出ロジックを簡単に紹介します。

MIW-Linear model
  • 利用シーン
    • 最初、最後などのタッチポイントの種類に関わらず、各メディアの全てのタッチポイントを均等に評価したい場合に使用します(メディア間の重みづけは行う)。
  • 計算方法
    • 【機能1】アトリビューションスコア算出を参照。
MIW-Last Interaction model
  • 利用シーン
    • 最後のタッチポイントのメディアを高めに評価したい場合に使用します。例えば、販売サイクルが超短期間(期間が限定されたキャンペーンなど)の場合に使用します。
  • 計算方法
    • MIW-Linear modelでベーススコア算出後、最後のメディアに、ボーナススコアとして、ベーススコア合計の「30%」を付与。
MIW-First Interaction model
  • 利用シーン
    • 最初のタッチポイントのメディアを高めに評価したい場合に使用します。例えば、初期のブランド認知を目的に広告やキャンペーンを掲載している場合に使用します。
  • 計算方法
    • MIW-Linear modelでベーススコア算出後、最初のメディアに、ボーナススコアとして、ベーススコア合計の「30%」を付与。
MIW-Position Based model
  • 利用シーン
    • 最初と最後のタッチポイントのメディアを高めに評価したい場合に使用します。つまり、「ブランド認知させた媒体」と「CVを刈り取った(意思決定させた)媒体」をより高く評価します。
  • 計算方法
    • MIW-Linear modelでベーススコア算出後、最初と最後のメディアに、ボーナススコアとして、ベーススコア合計の「30%」を付与。
MIW-Time decay model
  • 利用シーン
    • CVに近いタッチポイントのメディアを高めに評価したい場合に使用します。例えば、販売サイクルが短期間の場合に使用します。
  • 計算方法
    • MIW-Linear modelでベーススコア算出後、最後のタッチポイントから最大5つ前までのメディアに、ボーナススコアとして、ベーススコア合計の「30%」「20%」「15%」「10%」「5%」を付与。

MIWモデルに対する想い

アトリビューション分析では、「結果から逆算して分析ロジックをチューニングする方法」が1番実用的で、どのリサーチャーの分析にも勝ると考えています。

MIWモデルのスコア自動算出の仕組みは、“分析にかける時間と予算を節約”のために、ウェイト値や掛け合わせモデルの仕組みは、“広告主や広告代理店の方が、自社(クライアント)の商材・キャンペーンに合わせた実用的な分析モデルを構築できる”ために考えました。

優秀なアトリビューション分析モデルとは、「総コンバージョン」や「総CPA」の改善に繋がるモデルのことであり、決して貢献度の可視化だけができるモデルのことではありません。

このアトリビューション分析モデルがみなさまのお役に立てれば幸いです。

導入にあたって

MIWモデルは㈱オムニバス様のDMP「Pandora」内で無料でご利用いただけます。利用をご希望の方は、著者でも、オムニバス様にでも良いので、ご連絡いただければと思います。

著者の連絡先はコチラ

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この記事の著者

広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。

2008年、株式会社マクロミルに入社。2015年12月現在、Webマーケティング部門の責任者として同企業に所属。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)

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