アドテクで変わる記事広告の価値 ~効果的な記事広告の活用方法~
記事広告の概要と課題
そもそも記事広告とは何なのか?
記事広告とは、PR内容が通常の編集記事とよく似た体裁で編集された広告です。記事の体裁をとることでユーザーの抵抗感が薄れ、かつ、通常のバナーやテキストの広告よりも商品やサービスについて深く理解させることができます。
ただし、通常記事として読んでいたつもりのユーザーが、これを記事広告と気付いた時に“裏切られた”“やらせ”“ステルスマーケティング”など、マイナスのイメージを抱くこともあるので、記事の表現には注意する必要があります。
あくまで、“商品やサービスの内容を深く理解してもらうための広告”の位置づけで出稿してください。
決して、「メディアに取り上げられた」みたいな見せ方はしないように。
効果測定における大きな課題
今までの記事広告には、効果測定における大きな課題がありました。
- 記事広告の効果測定における課題
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- 分かること
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- 記事のPV、UU(メディアが提出したレポートベース)
- 記事にあるURLをクリックした数(商品・サービスページ流入数)
- 記事にあるURLをクリックして、その後コンバージョンした数
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- 分からないこと
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- 中・長期的な記事のPV、UUの推移
- 記事を“見た人”が記事で紹介している商品・サービスのページに訪問した数
- 記事を“見た人”が記事で紹介している商品・サービスを購入(CV)した数
記事を作成・掲載してもらうだけでは、掲載開始から一定期間が過ぎた後に、メディアに頼んで掲載結果のPVやUUのレポートを提出してもらうことしかできません。これだと、この出稿が良かったのか悪かったのか全く判断できません。
記事広告の効果を可視化する&広告効果を高める
まずはタグマネージャー設置の許可をもらう
記事広告出稿の際にメディアと交渉して、作成してもらう記事ページへの「タグマネージャー」の設置許可をもらいます。
タグマネージャーを設置してもらうことで、「アクセス計測用のタグ」「ビュースルー(CV・アクセス)計測用のタグ」「リターゲティング用のタグ」など、様々なタグの呼び出し設定が広告主側でコントロールすることが可能になります。
※ポリシー上、NGの媒体もあります。大手ビジネス誌のWebメディアへの出稿の際、実際にタグの設置を相談したところ、比較的すぐにOKがもらえました。
記事ページのアクセス解析を行った結果
タグマネージャーからGoogle AnalyticsやSiteCatalystなどのアクセス解析のタグを呼び出すことで、「記事ページが実際にどのくらい閲覧されているか」が時系列で分かります
アクセス解析を行ったところ、面白いことが分かりました。下図をご覧ください。
記事掲載直後は、誘導バナーなどで記事ページへ誘導したのでPVはもちろん高いのですが、3ヵ月目以降もPVが発生しています。この時期には誘導施策は行っていませんでしたので、これは自然検索による訪問やメディアサイト内のページ内検索による訪問と考えられます。
つまり、コンテンツさえWeb上に残っていれば、ロングテールで記事ページのアクセスが増えるということです。
また、Google Analyticsであれば、訪問者の性年代を推計したレポートも見れるので、「閲覧者が商材のターゲットと合っているか?」などの確認もできます。
ビュースルーコンバージョンも発生していた
タグマネージャーからDMPのタグを呼び出し、ビュースルーCVが発生しているかを確認しました。以下を見ていただくと分かる通り、クリックスルーCVの5.6倍のビュースルーCVが発生していることが分かりました。
全体の広告施策の効果を高めるために記事広告が利用できる
タグマネージャーからGDNやDSPの「リターゲティングタグ」を呼び出します。これにより、他の広告施策で記事を見た興味・関心度が高い人をターゲティングして広告配信することが可能になります。
ディスプレイ広告のリターゲティング配信だけでなく、RLSAと呼ばれるリターゲティングのリスト(AdWordsリマーケティングリスト)を利用したリスティング広告配信にも活用することもできます。
記事広告についてのまとめ
今まで見えなかった部分を、見ることから始める
記事広告を出稿する際は、ただコンテンツを作るだけでなく、必ずアクセス解析が行えるようにアクセス解析ソフトのタグを設置してください。その際にタグマネージャー経由の設置だと、他のタグの出し入れもコントロールできるので便利です。
大事なのは、ロングテールのアクセス数を計測することです。確かに短期的に見ると記事広告は運用型広告よりも効率が悪いですが、記事ページが半永久的にWeb上に残る媒体も多く、かつ、コストは出稿時の1回しかかからないので、半年~1年などの期間で見ると、思っている以上の効果があるはずです。
出稿する時のポイント
- 記事ページは半永久的にWeb上に残るか
- SEOに強いか(メディアとしてのパワーがあるか)
- サイト内検索で検索結果に表示されるか
上記は、「ロングテールのアクセス数を伸ばす」ために押さえて欲しいポイントです。出稿を決める前に必ず確認してください。特に「記事ページがWeb上に残るかどうか」は最も重要で、メディアによっては一定期間掲載後に削除されるものもあります。
記事広告を提供しているメディアはページランクも高く、SEOに強い場合が多いです。記事に記載するキーワードによっては、自社のSEO対策では補えないワードで記事ページを上位表示させることができる可能性もあります。コンテンツを作成する際は、そういうSEOの視点を持って表現を作っていくと、よりロングテールのアクセス数アップに繋がります。
※注意 リンクによるSEO効果(ページランクの受け渡し)は期待できない)
関連記事:外部リンクの獲得:外部SEO対策
関連記事:ディレクトリ登録:外部SEO対策
間接コンバージョン(アシストコンバージョン)を意識する
「リターゲティングタグを記事ページに設置する」という単純なやり方ですが、広告運用はこういう小さな工夫の積み重ねが大事です。
これでターゲティングした人は、その商品・サービスの記事を見てくれた“見込顧客”です。そしてこれは、自社サイトのリターゲティング以外で見込顧客をターゲティングできる貴重な手段です。
記事ページからの直接CVは無かったかもしれませんが、それは「タイミングが悪かった」「まだ、比較・検討したかった」だけで、リスティング広告やディスプレイ広告など他の手段でアプローチを続ければコンバージョンに繋がるかもしれません。
今だからこそ言いたい“枠”の大切さ
オーディエンスデータの登場によって、ターゲティングは「枠から人へ」と言われますが、個人的には「枠の大事さも忘れないで欲しい(むしろ枠のターゲティングは非常に強力)」と思います。
生活シーンによって、個人の情報に対する興味・関心は変化します。著者の場合ですが、朝はニュース情報をアプリで見て、昼は職場のPCでマーケティング情報を検索し、夜はニコニコ動画で趣味の時間。
夜のニコニコ動画を見ている“ビジネスOFF”の自分に、マーケティング情報の広告が表示されたとして興味を持てるでしょうか?恐らく目に止まりません。
同じ“人”であっても、時間・場所などシーンが違えば、それに合わせたアプローチが必要となります。
あらゆるシーンを事前にセグメンテーションできるのが“枠”であり、PMPなどの面を指定する広告だと思います。例えば、マーケティング情報サイトに訪問するユーザーは、「“今”、マーケティング情報に対する興味・関心が高くなっている」と言えます。
広告主としての著者の見解は、「枠のターゲティングは人よりも強力」。「枠×人ならさらに強力」です。
この記事の著者
広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)
マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。
1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。
2008年、株式会社マクロミルに入社。現在は同企業のオンラインマーケティング部門の責任者として、デジタルマーケティングを推進。
株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。
2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。
2021年、公正取引委員会 デジタルスペシャルアドバイザーを受嘱。デジタル市場における競争政策の的確な運営のために活動。
著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)
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