「健全な動画広告の世界を作るには、今がチャンス」オムニバスCEO×Digital Marketing Lab対談

ExchangeWire Japanとの共同企画記事です。

マーケッターは、動画広告界隈の動向をどのように読み解き、そして動画広告とどのように向き合うべきか。昨今業界で話題の中心となっている動画広告について、今年2月にマクロミルとデジタルインファクトが実施した動画広告業界調査の結果を踏まえて、オムニバス 代表取締役CEOの山本 章悟氏と、Digital Marketing Labの広瀬 信輔氏にお話を伺った。

山本(オムニバス)/広瀬(デジタルマーケティングラボ、マクロミル、ディーテラー) (聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)

Webを飛び出して「それ以外」が生まれ始めた動画広告

-動画広告の市場規模は、過去数年で何倍にもなりました。まずは、ここ数年のビジネス環境の変化について、お二人それぞれのお立場からどのように感じられているかについて、お聞かせください。

[山本]
我々、オムニバスが動画広告に関わり始めたのは2012年末からです。単純に数字だけで見ても大きくなったことを実感しています。マーケッターの意識も変わりましたし、なくてはならないものとしている広告主も増えました。ただ、市場大きくなると同時に、未整備な部分も目立ってきています。課題も多いのが現状です。

[広瀬]
私がマクロミルのマーケッターとしてプロモーション用動画を初めて作ったのは2013年です。当時は何よりコスト、リソース、ノウハウ面で制作のハードルが非常に高かった。現在は安価にクラウドソーシングで動画を制作する会社の登場や、広告会社や広告代理店が社内に制作部隊を持つなど、制作面の課題はだいぶクリアになってきたのではないでしょうか。

ただ、私が注目しているのは、それよりも動画広告が表示されるスクリーンやシーンの変化です。

[山本]
Webから飛び出し始めているわけですね。

[広瀬]
はい。動画といえば、今まではスマホやPCなど、自分が手にしているデバイスで見るものでした。それは今も主流ではあるのですが、“それ以外”が生まれ始めている気がします。

例えば、IRIS社が提供しているタクシー内のデジタルサイネージ「Tokyo Prime」がそうですね。タブレットに搭載されているカメラが顔認証により搭乗者の属性を推定、GPSから位置情報を用いたターゲティングなど、今までのプログラマティックアドの良さも活かされていると感じます。こうした動画が表示されるスクリーンや、動画に触れるユーザーのシーンの変化は今後もありそうですね。

タクシー広告(デジタルサイネージ)「Tokyo Prime」
出典:デジタルマーケティングラボ

多様化する媒体と求められるコンテクスト

-先日実施した調査結果では、動画広告の利用率はYouTubeが引き続き強く、これにFacebook、LINEなどのソーシャルメディアが続くという傾向が見られます。各媒体をそれぞれどのように見ておられますか?

【取り扱っている・利用している動画広告媒体】
取り扱っている・利用している動画広告媒体
(マクロミル/デジタルインファクト調べ)

[山本]
ユーザー数に比例しており、安く再生数を稼げる、リーチが広いところが並んでいますね。リーチ数や再生単価ばかりに目がいっているのではないかということを感じます。

[広瀬]
AbemaTVやグノシーなど、テレビではリーチしづらい若年層に強いアプリ動画をテレビの補完として使っている人が増えてきたのではないでしょうか。そのほか、女性向けのC-ChannelやMixChannelなど、特化型の動画メディアは商材によってはもっとシェアがあるでしょう。

一方でやはり圧倒的に強いのはYouTube(Google)、Facebookなどの巨大プラットフォーマーですね。山本さんのおっしゃる通り、リーチ数と再生単価を重視すると、この選択になりますね。

[山本]
もっとバーティカルな媒体がたくさん出たほうがよいのではないでしょうか。媒体力やコンテクストの力を使った動画広告によるブランディングについては、このランキングからは読み取ることが出来ません。

山本 章悟(オムニバス)

マーケッターからすると安い単価でリーチが取れて効率的な面はありますが、負の側面もあります。YouTubeやFacebookはコンテンツのバリデーションが効かず、例えばヘイトスピーチ系のコンテンツに動画広告が流れてしまうこともあります。しっかりブランド広告として成り立たせるには、媒体の価値だったり、そのコンテンツの価値だったり、コンテンツのコンテクストと自社の動画が合っているかどうかのように、オフラインでやってきたような世界をつくらなければなりません。

[広瀬]
コンテクストのターゲティングは、今後の動画広告の1つの課題かもしれませんね。先日業界関係者の方とお話しした時にDynAdmicというフランスのスタートアップ企業の話を聞きました。動画の音声をテキスト抽出したり、動画ページのコメントを分析したりして、コンテクストを推察する技術、またこれをターゲティングして広告配信する技術も生まれているようですね。

[山本]
いまはユーザーの属性やWeb訪問履歴でターゲティングしている部分があるので、視聴している動画と全然違うコンテクストの広告動画が流れてしまったりします。コメントを分析するのもひとつの手法です。

動画の音声内容をすべてテキスト化して、そこで話されている内容をもとにターゲティングして広告配信する技術は実際に利用している企業はありますね。そうすると動画のコンテクストと広告のコンテクストを合わせやすいので、ユーザーにとっては自然な動きになります。

例えば広告に出ている俳優の名前をキーワードにしてターゲティングすると、その名前が使われているところに広告が出せます。つまり、コンテクストが俳優視点でマッチングしているということで、今後必要なことだと思います。

[広瀬]
今見ているコンテンツに対して関連性が高い広告を流すという意味では、TVCMのターゲティングに似ていますね。ただ、これって動画サイトでないWebページに出すバナー広告だったらGoogleのコンテンツターゲットと同じことですよね。しかし、動画サイトの場合は、HTMLのテキスト情報のみからでは、そのコンテンツのコンテクストが読みづらい・・・だから今までとは違ったやり方でコンテクストを把握する必要があるというところでしょうか。

[山本]
はい。今後デジタルの滞在時間が増えていくので、きちんとブランディングし、コンテクストにマッチしたものを入れていかねば、真のブランド広告は実現しないと考えています。

ビューアビリティも、重視すべき動画広告の新しいKPI

-動画活用におけるKPIについて、下記のような結果がでております。これについては、いかがお感じですか?

【動画広告を有効活用する上で、重視すべきと思うKPI】
動画広告を有効活用する上で、重視すべきと思うKPI
(マクロミル/デジタルインファクト調べ)

[山本]
この結果は、マーケッターがほしいものではなく、メディア側、ソリューションプロバイダー側が出せるものが選ばれているように感じます。

[広瀬]
例えばマクロミルでリサーチする場合、「ブランド認知度」「ブランド好意度」「ブランド購入意向」などのブランディング指標を目的にリサーチを行うことが多いのですが、これが下位だったことは意外ですね。そもそも指標として見ていないのか、(計測する必要は感じているが、何らかの理由で)計測出来ていないだけなのか・・・僕は後者であると信じていますが(笑)。

[山本]
ここにプラスしてビューアビリティが出てくるべきだと思っています。あとはブランドセーフティ、すなわち好ましい状態でインプレッションが配信されている状態をKPIとしてとらえるのは、今年のキーワードになると思います。

先日、P&Gが「動画広告で広告がプレイヤーの50%以上2秒以上出ていなければ買わない」という内容をIABの年1回の会合で発表し、アメリカの業界にインパクトを与えました。一方で、Moatのようなサードクオリティベンダーの価値が見直されました。そうしたことの影響がこのデータに入ってくるべきでしょう。

[広瀬]
ビューアビリティの定義の話は以前からありましたね。MRCとIABのガイドラインでは、“広告ピクセルの50%が、スクリーンに1秒以上、動画の場合は2秒以上表示された広告インプレッション”ですね。しかし、ビューアブルインプレッション課金を採用しているのは一部のプラットフォーマーやメディアのみで、なかなか広がっていませんね。ここはマーケッターとしては残念としか言えません。

[山本]
デジタルでのタイムスペンドが大きくなっているので、きちんとブランディング広告が成立していかなくてはなりません。デジタルの世界ではダイレクトレスポンスを追いすぎているので、ビューアビリティだったりアドフラウドの話だったり、変なコンテンツの上に出ていないかという、ブランドセーフティの課題が一気に噴き出してきています。P&Gのような広告主が声を上げ始めましたが、日本ではまだ議論がされはじめたところです。ソリューションプロバイダーやプラットフォームにとってはこれがチャンスだと捉えられるかどうかが重要だと思います。

[広瀬]
雑な表現かもしれませんが、「コンバージョンがとれればそれでいい」というのがダイレクトレスポンスだと思うので、その考えのまま「ブランディング広告で何を見るべきか」というのが分からないまま、動画広告が走り出したような印象はありますね。

ブランド体験に重要なのは、内容とタイミング

―動画広告の効果について。動画広告の効果を高めるうえで、何を重視すべきでしょうか?

【動画広告の効果への影響が大きいと思われること】
動画広告の効果への影響が大きいと思われること
(マクロミル/デジタルインファクト調べ)

[山本]
動画の内容がやはり重要で、あとは出るタイミングが大切です。よいコンテンツだったとしても、他の動画を見たい時に出ていると、それはブランド体験としてはそんなに素晴らしいものではありません。ですから、動画が目的地になるような世界観だといいなと思っています。

[広瀬]
動画の内容のみでなく、動画をいつ・どこで見るかもブランド体験に含まれるということですね。

[山本]
はい。動画を軸にしたブランド体験がこれからは求められます。ベンダー側もそれを用意すべきです。

[広瀬]
つい最近の話ですが、スマートテレビを買ったんですよ。さっそくネットに接続し、テレビのスクリーンで初めてYouTubeを見ました。PCやスマホと同様にプリロール広告が流れたんですが、感じ方が全然違ったんですよね・・・これは面白い発見でした。

テレビを見る時ってリラックスしているというか、明確な目的がないというか、頭の中がフラットで他のコンテンツを受け入れられる領域がある感じなんですよね。あまり「広告に邪魔された」という感じがしませんでした。おそらく僕の動画広告のスキップ率はPCやスマホと比べたら、テレビが確実に低いはずです。あくまで個人的な話なので、この辺はリサーチしてみたいですね。

ちょっと話がそれてしまいましたが、「同じ動画広告であっても、見るスクリーンが違うと感じ方が変わる」という実体験です。

広瀬 信輔(マクロミル/デジタルマーケティングラボ/ディーテラー)

[山本]
当社のVISMを使って某クライアントさんのママ向け動画を5媒体でタイアップして掲載してもらい、Moatで計測したところ、高い再生率でした。「広告ではなく、コンテンツを扱います」という考え方で、ライターやメディアが動画を記事として書き起こします。誘導は媒体のリンクからくる、スポンサード型ネイティブアドです。共感してもらえるような動画を作らなければなりませんから、育児全体の文脈の中で考えて、VISMで拡散するという、コンテンツとコンテクストのマッチングを行ったのです。

ここでのPVはポジティブPVだと呼んでいます。(笑)
リアルな共感がうまれたことがコメントからもわかりました。数字ではない情緒的なところを伝えられた、動画広告のよい事例だと思います。

やはり、いま議論しなくてはならないのは、再生数ではなく、視聴の質です。どういうシーンで見られているかということが重要と考えます。

ユーザー視点で好かれる動画広告が市場発展に不可欠

-業界関係者は、今後の市場の発展には新しい媒体の登場が不可欠とみているようですが、どうお感じでしょうか?今後新しい媒体は登場するでしょうか?お二人は、どのようにみておられますか?

【動画広告市場の発展において欠かせないと思われること】
動画広告市場の発展において欠かせないと思われること
(マクロミル/デジタルインファクト調べ)

[広瀬]
コンテクストによるターゲティングが難しい現状、ある層のユーザーに特化した動画メディアというのはマーケッターからも重宝されるかもしれませんね。ただし、個人的には新しい媒体よりも「ユーザーの邪魔をしないためテクノロジー」が必要だと思います。

動画広告の表現力は素晴らしいものですが、ユーザーの行動を邪魔しやすい広告とも言えます。特に動画サイトはテキスト量が少なく、コンテクストが読みづらいという課題があり、間違ったマッチングをすると、ユーザーは興味もない動画に数秒~15秒程度の時間を奪われるわけです。ユーザーと広告のミスマッチを無くすための、本質的なアドテクノロジーを発展させなくてはならないと感じています。

[山本]
ブランドセーフティとビューアビリティはベースとして欠かせない、それによって安心・信頼・安全が確立した動画広告市場ができると考えます。マーケッターやソリューションベンダーの方々に覚醒してもらい、ユーザー視点になってほしいです。そうすれば動画広告はみんなに好まれるものになっていくでしょう。

[広瀬]
媒体もですが、効果測定も課題で、リサーチ会社もまだまだ踏み込めていません。動画広告を実施するときに必ずリサーチがセットになるかといえば、コストが高いのでなかなかそうはいきません。コスト的にもスケジュール的にもシームレスな連携というのは必要です。ここは僕たち、リサーチ会社の人間が考えていくべきことですね。(※)

※広瀬氏は調査会社マクロミルに所属している。

[山本]
P&GはMRCのスタンダードに準拠してほしいなどと訴えているそうです。やはり、業界の統一指標をつくってもらいたいと思います。それを行うのはサードパーティでなくてはなりません。媒体はサードパーティを入れるのをよしとしていませんが、問題が起こったことでようやくFacebookがサードパーティを入れることを表明しました。そこでMoatが出てきて、このタイミングでオラクルが買収することになったのです。

日本にはMRCのような団体がないので、JIAAさんにスタンダードを作る動きはないのかと問い合わせたところ、議論をされているそうです。健全な動画広告の世界をつくるために、できれば広告主さんからもアプローチしていただきたいですね。

事業的にはいまがチャンスだととらえています。好ましくないメディアや広告枠に動画が出てしまう点を解消できるようなプロダクトやサービスをつくっていけば、もっと良い動画広告のマーケット環境が形成できると思います。そのための議論が必要なのではないでしょうか。

本インタビューで紹介されている調査結果の抜粋版(無料)はこちらから ※リンク先「広告・メディア」タブ内

クロス集計を含む完全収録版(有料)はこちらから

山本(オムニバス)/広瀬(デジタルマーケティングラボ、マクロミル、ディーテラー)

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この記事の著者

広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。

2008年、株式会社マクロミルに入社。2015年12月現在、Webマーケティング部門の責任者として同企業に所属。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)

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