ディスプレイ広告の2つの役割と効果測定方法

レスポンス広告としてのディスプレイ広告

レスポンス広告とは、「直接的・短期的なCV獲得を目的とした広告」のことです。この広告のミッションは、"低いCPAで多くのコンバージョンを獲得する"ことです。これに最も優れていると言われてきた広告がリスティング広告ですが、(特に静止画の)ディスプレイ広告もレスポンス広告としての利用価値が高い広告です。

しかし、それを可視化するには、3PASや、DMPを導入し、“1CVの獲得に関係した全ての接触メディアの貢献割合を算出し、アトリビューション分析でスコアを配賦する”必要があります。

アドエクスチェンジやDSPからでも、ビュースルーCVのレポートは出せます。しかし、リスティング広告などの他の広告施策とCVが重複することが多いので、各施策のCVを合計すると、実際に獲得できた総CVよりも高い数値になります。

ダイレクトレスポンス施策のPDCA

ディスプレイ広告のレスポンス効果について、念のためアトリビューション分析以外にも、「広告を出している時/止めている時」のサービスページ全体の獲得CVを比較したり、広告Impと獲得CV総数の相関係数を算出したりして分析したのですが、結局、BtoBサービスでも、BtoCサービスでも、「ディスプレイ広告のレスポンス効果は高い」ということが言える結果となりました。

検証したサービス ※サービスページにジャンプします

ブランディング広告としてのディスプレイ広告

ブランディング広告とは、「ブランディング指標を上昇させることを目的とした広告」です。この広告のミッションは、“認知度、メッセージ想起、好意度、購入意向などのブランディング指標を向上させる”ことです。

ディスプレイ広告は、CVを獲得するためのレスポンス広告でありながら、ブランディング広告としても利用できます。

例えば、ブランディング指標の1つである「認知度」を上げるためには、多くのユーザーにリーチする必要があります。リスティング広告では、リーチの母数が指定したキーワードを検索したユーザーに絞られますが、ディスプレイ広告では、あらゆるWebサイトに広告を表示することができるので、多くのユーザーにリーチすることができます。

「メッセージ想起」「好意度」を上げるには、クリエイティブに表現力が必要です。ブランディング広告として最も有名なのがTVCMですが、どのTVCMも動画や音声で視聴者にメッセージを伝えます。ディスプレイ広告でも動画やインタラクティブコンテンツが配信でき、数年前と比べて、クリエイティブの表現力は高まっています。

また、このようなクリエイティブに対応した広告枠は、近年増加の傾向があり、ディスプレイ広告のブランディング活用が進んでいると感じます。

ブランディング施策のPDCA

ディスプレイ広告がブランディング広告として利用できる理由
  • 配信面:多い(あらゆるWebサイト)
  • ターゲット母数:多い(全てのインターネットユーザー)
  • クリエイティブ表現力:高い(画像、動画、インタラクティブコンテンツ)

さらに、Web特有のターゲティング技術と運用型広告の特徴を生かして、ブランディング指標を上昇させるための“コントロール”ができるという点が特徴です。

もちろん、本当にブランディング指標の向上に繋がるかは、「配信面」「ユーザーターゲティング」「クリエイティブ」というディスプレイ広告の構成要素をチューニングしていくことが必須です。また、ブランディング効果を実証するには、広告に触れた人と触れていない人に対して、同じ形式でアンケートを行うなど、実際にユーザーに“聞く”必要があります。その方法として、リードバナーアンケートインバナーサーベイ/従来型リサーチ(市場調査会社のパネルを使ったアンケート)などのリサーチ手法があります。

ディスプレイ広告の役割と効果測定方法

恋愛に例えるとこんな感じ・・・・

ダイレクトレスポンスとブランディングの比較(恋愛)

【まとめ】レスポンス広告としてのディスプレイ広告、ブランディング広告としてのディスプレイ広告

レスポンス広告としてのディスプレイ広告
  • ミッション:低いCPAでコンバージョンを多く獲得する
  • 主なクリエイティブ:静止画、テキストタイプ(低CPM、低CPCのクリエイティブ)
  • 評価指標:Click、CV、CPA、サイトアクセス数 など
  • 効果検証方法:アトリビューション分析
ブランディング広告としてのディスプレイ広告
  • ミッション:認知度、メッセージ想起、好意度、購入意向などのブランディング指標向上
  • 主なクリエイティブ:静止画、動画、インタラクティブ広告(リッチアド)
  • 評価指標:ブランド認知、広告認知、メッセージ想起、スポンサー想起、ブランド好意度、購入意向 など
  • 効果検証方法:リードバナーアンケートインバナーサーベイ/従来型リサーチ(市場調査会社のパネルを使ったアンケート)

目的に合った効果測定方法を選択することが大事、そしてブランディングという言葉を「逃げ道」にしてはいけない

ディスプレイ広告の役割や効果測定を分けて整理しておくことは予算、配信面、ターゲットユーザー、クリエイティブを決定していく上で非常に重要です。効果測定において、ブランディング目的の広告をレスポンス広告の指標で評価しても意味がないですし、その逆もしかりです。

特に静止画のクリエイティブはレスポンス、ブランディングの両方の目的で使われることもあり、レスポンス目的で実施した広告キャンペーンが、ブランディングに効く可能性もあります。そのような場合は、レスポンス、ブランディング、両方の評価指標で効果測定を行っておけば、思わぬ発見があるかもしれません。

ちなみに、海外ではブランディング目的のディスプレイ広告利用が60%となっており、レスポンス目的(40%)を上回っているそうです。

2つの方法で効果測定して、良い結果が出なかったら、容赦なくそのキャンペーンを切ってください。レスポンス、ブランディング両方の側面で効果測定しているので、どんな言い訳も通用しません。

このように効果測定を、厳密に行っているのには理由があります。著者は「ブランディング」というワードが、本当の広告効果を隠すための“逃げ道”になっていることが、以前から気になっています。

そのような発言をする人に限って、「ブランディング効果って何ですか?どうやったら分かるんですか?」と質問すると、よく分からない返答が返ってきます。

ブランディングとは、企業やサービスの価値を向上させるための活動であり、マーケティングを支えるものだと思っています。それを言い訳に使って欲しくありません。そして、「ブランディング効果」というのは証明できる(数値化できる)ものなので、ブランディング効果が本当にある広告なら、その効果を証明すべき(少なくともブランディング効果を証明しようとする努力は見せてほしい)だと思っています。

レスポンス目的なら、効果測定は「アトリビューション分析」で

アトリビューション分析については、他の記事で基礎知識を紹介しています。また、実践コンテンツとして『アトリビューション分析の手順と、新・分析モデル「MIWモデル」』を記事にしました。こちらでは、分析手順の説明のほか、㈱オムニバス様と共同で開発いたしましたアトリビューション分析モデルを紹介しています。ぜひご覧ください。

ブランディング目的なら、効果測定は「アンケート」で

ブランディングが目的なら、リードバナーアンケート/インバナーサーベイ/従来型リサーチなどで、メディア接触者に直接“聞く”ことで効果測定が可能です。

従来型リサーチでは調査会社のパネルを使って、広告接触者と非接触者にアンケートを行います。高価である分、プロリサーチャーの分析レポートなど、品質の高いアウトプットが期待できます。

しかし、通常のネットリサーチと基本的に同じ方法でリサーチを行うので、オンライン広告キャンペーンで重要な「アウトプットの速さ」では課題があり、PDCAサイクルが速いWebのキャンペーンには向いているとは言えません。

また、アウトプットはExcelやPowerPointベースのレガシーなレポートなので、最近のアンケートツールにあるような、オンラインでフィルタやクロス集計を行い、自由に切り口を変えて分析したりすることはできません。

主な事業者とサービス

「リードバナーアンケート/インバナーサーベイ」は、オンライン広告キャンペーンで重要な「アウトプットの速さ」に強く、リアルタイムにアンケート結果を自由な切り口で分析することが可能です。

また、調査会社のパネル以外にアンケートできる点が、“一般的な消費者像に近い”として支持されています。インバナーサーベイという言葉は聞いたことがある方も多いと思います。

「リードバナーアンケート/インバナーサーベイ」は、オンライン広告キャンペーンで重要な「アウトプットの速さ」に強く、リアルタイムでアンケート結果分析が可能です。

簡単に仕組みを説明すると、DSPなどの広告配信システムを使ってアンケート回答用のバナーを配信し、広告キャンペーンの接触者と非接触者にバナーを表示して、ブランドリフト効果を検証するものです。

海外においては、インバナーサーベイがブランド広告の効果測定手法として主流のようですが、インバナーサーベイには重大な欠点があります。なので、著者個人見解としては、「リードバナーアンケート」が“ブランディング広告の効果測定手法として最も適している”と考えています。このことについては、以下の関連記事で詳しく説明いたします。

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この記事の著者

広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。

2008年、株式会社マクロミルに入社。現在は同企業のオンラインマーケティング部門の責任者として、デジタルマーケティングを推進。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。

2021年、公正取引委員会 デジタルスペシャルアドバイザーを受嘱。デジタル市場における競争政策の的確な運営のために活動。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)

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