アドベリフィケーションの仕組みと役割

アドベリフィケーションの仕組みと役割

アドベリフィケーションの概要

2012年頃、DSPなどのプログラマティックな広告配信において、アドベリフィケーションという仕組みが使われるようになりました。アドベリフィケーションには大きく2つの役割があり、1つは「広告主のブランド価値を守る役割(ブランドセーフティ)」、もう1つは「見られる場所に広告を表示する役割(ビューアビリティの保証)」です。

アドベリフィケーションツールを広告主が直接導入するケースは少なく、自社の広告インベントリの品質を向上させる目的で、広告配信会社が導入するケースがほとんどです。

2017年現在において、アドベリフィケーション登場当時よりも議論が活発に行われている印象がありますが、その背景には、広告取引の透明性や健全性に対する広告主の注目の高まりがあります。

広告主のブランド価値を守る役割(ブランドセーフティ)

アドネットワークなどのネットワークを使った広告配信は「大規模な配信ができる」「一括して配信が行える」などのメリットがある反面、媒体の情報を広告主に開示することができない場合があり、意図していないところに配信される可能性があります。アドベリフィケーションツールを利用することで、公序良俗に反するサイトへの広告表示を抑制することが可能です。

ブランドセーフティについて、YouTubeのヘイトスピーチ動画に英国政府の広告が掲載され、批判が殺到したニュースが有名です。この件はUSのAT&Tやベライゾン、JPモルガンなどの大手広告主にまで派生し、広告出稿の取り止めまでにまで発展しました。

日本では、広告インプレッションよりもクリックやコンバージョンなどの広告に対するアクションのみをKPIとする広告主が多いため、“広告インプレッションの質”に対する広告主の意識は比較的低いです。しかし、前述のような広告インプレッションに対するユーザーのネガティブな反応は、動画メディアを中心に国内でもいくつか事例があり、近年広告インプレッションの質に対する国内広告主の意識は高まっています。また、これには個人がSNSで企業や社会に対して意見を簡単に発信できるという、現代社会の特徴も影響しています。

広告主の意識の変化

見られる場所に広告を表示する役割(ビューアビリティの保証)

ビューアビリティとは、広告掲載インプレッションのうち、実際にユーザーが閲覧できる状態にあったインプレッション(ビューアブルインプレッション)の比率のことです。これを高い水準で保証することもアドベリフィケーションの重要な役割となります。

アドネットワークやDSPなどのディスプレイ広告では、CPMという課金方式(広告インプレッションに対してコストが発生する課金方式)が多くあります。広告インプレッションは、Webページ上にある広告コンテンツがロードされたタイミングで発生するため、広告主は広告がユーザーの目に触れなかった(目に触れる位置までユーザーがスクロールしなかった等)場合も、広告コストを支払うという問題があります。

特に、表示面積が限られるスマートフォンデバイスではビューアビリティが低い傾向にあり、年々成長するスマートフォン広告市場において、ビューアビリティを担保することは大きな課題となっています。

実際、2014年にGoogleは自社のディスプレイ広告を対象にビューアビリティの調査を行っているのですが、結果は「視認できないインプレッションが全体の約56%を占める」というものでした。この結果は、広告主のビューアビリティに対する注目を高めました。

MRC(Media Rating Council)とIAB(Interactive Advertising Bureau)が定めたガイドラインでは、“広告ピクセルの50%が、スクリーンに1秒以上(動画の場合は2秒以上)表示された広告インプレッション”を、ビューアブルインプレッションと定義しており、この基準を採用しているアドベリフィケーションツールは国内でも多いです。

ビューアブルインプレッションの定義

広告取引の透明性の問題とエコシステムゆえの課題

近年、デジタル広告取引の透明性の問題(数値の不正操作、掲載媒体の不透明さ)が注目を浴びる中で、第三者機関によるビューアビリティのニーズが高まっています。2017年2月、P&GはMRCのビューアビリティ基準を採用し、動画広告で広告がプレーヤーの50%以上2秒以上表示されていな場合は広告出稿しない、という内容をIABの年1回の会合で発表し、世界最大の広告主のこの発言は、広告業界に大きなインパクトを与えました。

これは、ビューアブルインプレッションのみが課金対象となる、vCPMで広告出稿するということでもあります。GoogleやFacebookなど、巨大プラットフォーマーは既にvCPMでの広告出稿が可能となっていますが、現在のところ国内のほとんどのDSPがこれに対応できておらず、未だにCPM課金が主流です。これにはアドテクの特徴とされてきた「エコシステム」ゆえの課題があります。

アドテクのエコシステム

例えば、vCPM課金を採用するには、「SSPがメディアに支払う広告掲載料を、vCPMベースに変更する(広告報酬の見直し)」や「SSPからは従来通りCPMで仕入れて、DSP側でvCPMに変換して広告主に提供(非ビューアブル在庫に対するDSP側の費用負担のリスク)」などが可能性として挙げられますが、DSPのみでコントロールできる範囲が限られていたり、コストの問題があったりと、なかなかハードルが高いのです。

とはいえ、広告主からのvCPM課金のニーズは高いため、vCPM課金に非対応のDSPは今後対応を検討する必要があるでしょう。

“広告インプレッションの質”に対する広告主の注目の高まり

今回書いたアドベリフィケーションもそうですが、“広告インプレッションの質”に対する広告主の注目は今後高まるでしょう。以下がその根拠の一例です。

アドブラウド(広告詐欺)問題

アドフラウドとは、広告掲載料を不正に得るために、ボットと呼ばれる自動化プログラムなどを利用し、インプレッションやクリックを偽装・量産する手法です。広告インプレッションが本当に人に見られたものなのか、日本ではまだまだ課題意識は低いが、Momentum株式会社など、アドフラウド対策のためのソリューションを提供する国内企業も登場してます。

リサーチ会社によるターゲットリーチ&ブランドリフト計測

リサーチ会社のパネルを利用することで、広告インプレッションがターゲットとしているユーザーに見られたかを計測できます。このターゲットリーチ数をKPIとして設定し、さらにブランドリフト調査を行うなど、リーチに対する効果検証方法は確立されており、ナショナルクライアントを中心に利用が拡大しています。

O2Oマーケティングの本格化

これはまだ発展途上ではありますが、GPSやビーコンを使ったオフラインコンバージョンの計測や、ジオデータのマーケティング活用も、広告インプレッションに対する広告主の意識の変化を促すものだと考えています。オフラインにコンバージョンがある広告主は、そもそも、これまでも正確にコンバージョンを計測することが難しかった。そのため、オンラインのみで完結する広告主よりも、KPIを手前に設定する必要があり、「ターゲットリーチ」という考え方が受け入れられやすいのです。

また、オフラインコンバージョンについて、オンラインコンバージョンのように全数で計測できるものではありません。クリックでは母数が少なくなりすぎるため、広告インプレッションを母数にしたコンバージョン計測が取り入れられるのではないでしょうか。そうなると効率的・効果的に広告をターゲットに“見せる”ことが重要視されるはずです。

まとめ

このように、マイナスな面・プラスな面の両方で、今後、広告インプレッションの質に対する注目は高まると考えてます。

念のため伝えておくと、「クリックは悪ではないし、コンバージョンも悪ではない」。むしろ両方とも正義です。問題は1,000インプレッションのうちの、1回起こるか起こらないかの指標にだけ注目して、必ず発生する1,000回のインプレッションを見ていないことなのです。

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この記事の著者

広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。

2008年、株式会社マクロミルに入社。2015年12月現在、Webマーケティング部門の責任者として同企業に所属。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)

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