PMP(プライベートマーケットプレイス)の仕組みと特徴

RTBの広告枠品質課題をクリアできる!? プライベートな広告取引市場

PMP(プライベートマーケットプレイス)の概要

2015年頃、PMP(Private Market Place)と呼ばれる広告取引市場が登場しました(まだ普及しているとは言えない)。USでは2011年以前から存在していたマーケットです。

これまでのRTBとは異なり、PMPでは参加できるメディアと広告主が限定されます。オープンで取引されるRTBには、広告枠の品質や透明性などの課題がありましたが、PMPの場合は広告を掲載するメディアが分かり、かつ、在庫予約ができたり、固定単価制の商品もあるため、特に、TVCMを出稿しているようなブランド広告主を中心に、シェア拡大が期待されます。

PMPでの広告取引にはいくつか種類があります。以下にて解説します。

まずは現在のRTB取引市場の課題を整理

RTBの課題

初期のアドネットワークは、余り在庫や中小サイトの広告枠が中心だったので、ブランドイメージを低下させるようなサイトに掲載されたり、媒体情報が開示できないことも多くあり、大手企業にとっては出稿しづらいものでした(ブランディング広告が出しづらい)。

また、最近ではビューアビリティの低さもRTBの抱える課題として耳にするようになりました。

広告枠の品質課題(初期のアドネットワーク) 広告枠の品質課題(DSP登場後)

DSPが普及する頃には、広告取引市場が拡大し、優良な広告枠も増えました。配信会社は、ターゲティングの技術(オーディエンスターゲティング、DSPのオプティマイズ機能など)やアドベリフィケーションというツールを用いて、広告主のニーズに応えてきたのです。

しかし、基本的には、「広告枠の品質」という課題に対して、「ターゲティングの精度を高める」という方法で対処してきたため、低品質な広告枠自体は市場に残っています。

アドベリフィケーションは、このような課題を解決するためのツールですが、日々無数に増えるメディアの広告枠を適切に評価し精査していくには、これだけでは無理がありました(ブラックリストの構築が、増加するメディアの数に追いつかない)。

実際にRTB市場には、未だ多くの低品質な広告枠が存在します。

また他のRTBの課題として、「入札額を上げること以外に、広告枠を優先的に買い付けることができない」ことが挙げられます。RTB市場ではインプレッション単位でオークションが行われるため、どうしても欲しい広告枠があったとしても、そこに広告を出せるかは、入札するまで分かりません。

プログラマティックな広告取引とPMPの種類

プログラマティックな広告取引の種類

前述の「広告枠の品質課題」を解決してくれそうなのがPMP(イメージは純広とRTBの間)です。

プログラマティックな広告取引は、RTB(オークション)か否かで2つに分かれます。そこから、RTBでは参加方法がオープン/クローズかで2つに分かれ、Non-RTBでは、在庫予約(guaranteed)のあり/なしで2つに分かれます。

プログラマティックな広告取引の種類

Open Auction
これは、現在のアドネットワークやDSP経由で、誰もが参加できるマーケット(Open Exchange)で行われる取引方式です。初期のアドネットワークの時代では、余り在庫や中小サイトの広告枠が中心でしたが、現在は品質の高い広告枠も増え、また、DSPなどアドテクの発展によって広告主に浸透してきました。
Invitation Only Auction(RTBの中のPMP)
全ての広告主やメディアが参加できるのではなく、参加者が限定されたクローズドオークション(プライベートマーケットプレイス)になります。Open Auctionに対して優先権を持っており、良い広告枠がオープンなRTBに流れる前に入札できます(フロアプライスがOpen Auctionよりも高く設定されており、結果的にOpen Auctionより優先的に買い付けることができる)。次に出てくるNon-RTB programmaticのマーケットと区別するため、“RTBの中のPMP”と考えてください。これに限らずPMPでは、出稿するメディアが事前に分かっていることが、オープンマーケットと比べた時の大きな違い(強み)です。
Unreserved Fixed Rate(プライベートエクスチェンジ)
オークションが発生しない固定単価制の取引方式です。Invitation Only Auctionと同様、CPMを高くすることで、RTBに広告枠が流れる前に買い付けることが可能です。そのため、購入優先度がRTBよりも高くなります。在庫予約はできませんが、固定単価なので、広告主は必要な広告費を事前に想定することができることも特長です。固定単価という方式は、TVCMを出稿しているようなブランド広告主に受け入れやすい方式となります。
Automated Guaranteed(プライベートエクスチェンジ)
固定単価かつ在庫予約の取引方式です。購入優先度が最も高く、品質の高い広告枠を他のマーケットよりも先に購入することができます。その分CPMも高く、先行する海外市場の事例では、CPMがオープンなRTBと比べて、数倍~10倍以上にもなります。
しかし、USの動画広告では、広告主の91%がこの方式で購入しているという調査結果(Videology調査)があります。
Automated Guaranteedでは在庫予約と固定単価により、事前に必要な広告費を把握できることがメリットですが、それだけではありません。
例えば、TVCMをある期間に出稿するとして、同時期に(短期間で)Webで動画広告を○○インプレッション出したいとします。オークションでは、広告主の希望する量のインプレッションを確約することができませんが、Automated Guaranteedでは可能です。TVCMに限らず、季節のある商材では、“この期間で○○インプレッション欲しい”というニーズがあります。つまり、「一定期間のリーチ数をコミットできる」というのが特長です。

PMPがもたらす広告取引市場の変化

PMP普及後のプレミアムな広告枠の流れ

マーケットのポジションとプレミアムな広告枠の流れ

仮に、あるメディアの広告枠の1つが、全てのマーケットに参加しているとしたら、上図のような流れになります(あくまでイメージ)。

最も購入優先度が高いのが、「Automated Guaranteed」です。ここで買い手がつけばメディアは高い収益が出せます。Automated Guaranteedは在庫予約型なので、事前に買い手が分かります。買い手がつかない場合は、広告枠が他のマーケットに流れます。

次に購入優先度が高いのが、「Unreserved Fixed Rate」です。高いCPMでメディアに掲載を依頼することで、固定単価制を可能にします。ただし、在庫予約ではないため、他のマーケットで高い価格がつけばそちらに流れる可能性があります。そのため、購入優先度を“2位”と書くことに迷いがありました。しかし、実際はRTBよりも高値がつくはずなので、本資料では購入優先度を2位としました。

「Invitation Only Auction」もUnreserved Fixed Rateと同じように、高いCPMを設定して、Open Auctionよりも優先的に広告枠を購入します。プライベートエクスチェンジ(Automated Guaranteed / Unreserved Fixed Rate)と違い、RTBなので、単価は変動します。

最も購入優先度が低いのが「Open Auction」です。PMPで買い手が付かなかった広告枠が、このマーケットに流れることになります。

PMP(プライベートマーケットプレイス)によって広告枠の品質が改善される

広告枠の品質(プライベートマーケットプレイス)

PMPでは参加メディアが限定され、マーケット全体の広告枠の品質がOpen Auctionと比較して高くなります。広告主は事前に出稿するメディアを確認できるため、ブランドセーフティ、ビューアビリティ、Webサイトのテーマ、広告掲載面など、独自の視点で掲載メディアを選択することができます。

そして、PMPは高品質な広告枠をターゲティングする強力な手段です。さらに、オーディエンスデータと組み合わせることで、人のターゲティングも可能になります(メディア側の整備が必要)。

これまで、広告枠の品質改善(特に、ブランドセーフティとビューアビリティ)については、アドベリフィケーションがその役割を担ってきました。しかし、Open Auctionでは、膨大な数のWebサイトが存在し日々増加していくので、精査が追いついていないのが現実でした。

端的に言うと、アドベリフィケーションは、“良くない広告枠を見つけて、配信対象から除外する”という考え方(ブラックリスト除外)です。

一方、PMPの場合は、“良い広告枠を集めてマーケットを作る”という考え方(ホワイトリスト構築)です。アドベリフィケーションとは発想が逆になります。

広告主として実際に出稿した経験からお話しすると、特にスマートフォン向けの広告のビューアビリティはPCよりも極端に低くなります。そのため、これまで透明性の低いRTBでは、無駄インプレッションがあることを覚悟で、入札額を低くして対応してきました。

この点も、PMPによって解決されることを期待しています。

PMPを導入しない企業にとって、この変化はマイナス

PMPによって、今までプログラマティックなマーケットに出てこなかった新しいメディアが増えます。これはPMPを導入する企業にとっては、プラスになります。しかし、今まで品質の高い広告枠をRTBに流していたメディアがPMPに参加すると、RTBで購入できていた広告枠を購入できなくなる可能性もあります。これはPMPを導入しない企業にとってはマイナスです。メディアとして利益を最大化することは当然ですが、広告主としては気に留めておく必要があります。

国内・海外のプログラマティック広告市場について

USにおけるプログラマティックの状況と日本との比較

日本において、PMPは登場したばかりで、これからマーケットが作られるフェーズです。しかし、USでは既に存在しており、RTB(オープンマーケット)よりも高い成長率で、ディスプレイ広告におけるシェアを伸ばしています。eMarketerの調査では、2017年までにUSのディスプレイ広告の83%がプログラマティックになるという予測が出ています。RTBが52%を占めますが、Non-RTB programmatic(PMP)も31%と、高い数値です。

これに対して、2014年の日本のRTB経由のディスプレイ広告費を500億円くらいと推定すると、純広告含む、現在の日本の全ディスプレイ広告に対してのプログラマティックな取引の割合は、20%に満たないはずです。

これまでのアドテク系の広告商品と同様に、PMPがUSと同じ成長率で日本でも普及するとは考えにくいですが、ブランド広告主のニーズはあるはずです。あとは、セルサイドがメディアに対して、これの導入をサポートし、広告主を納得させる付加価値と評価指標を明確にしていくことだと思います。

国内のPMPサービス提供会社について

「Unreserved Fixed Rate」「Automated Guaranteed」分野
  • 2014年10月、国内最大手である広告代理店の電通は、Googleの協力のもと、プライベートマーケットプレイスの構築を発表し、2015年2月にベータ版のセールスを開始しました。
「Invitation Only Auction」分野
  • 2015年2月にエスワンオーインタラクティブとVOYAGE GROUPEが共同でPMP専業企業のintelishを設立しました。

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この記事の著者

広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。

2008年、株式会社マクロミルに入社。2015年12月現在、Webマーケティング部門の責任者として同企業に所属。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)

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