これからのWebマーケター
必要なのはマネージャーではなく、ジェネラリスト
「今あなたの会社はいくつのWeb施策を実施していますか?」
最近、Webマーケター、特に自社のWebマーケティングを担当するWeb担当者のあり方について「代理店に全て任せる(個人の意識)」「サイロ化した担当制(組織の形態)」というスタンスや体制では通用しないと思うことがよくあります。
「今あなたの会社はいくつのWeb施策を実施していますか?」
アドテクの登場によってディスプレイ広告が増えてきました。ソーシャルもターゲティング、バイラルという強みを持ち広告商品をどんどん出しています。多くの企業が新しい広告商品を取り入れるようになってきたと思います。これらを複数実施している場合、それぞれの関係性を考慮しながらマーケティングを考えないといけません。
「代理店への運用ノウハウ依存」「サイロ化した担当制」という、今まで多くの企業で普通に行われてきたことが、いよいよ限界に感じます。
細かい話になりますが、少し具体的な話をしましょう。
例えば、著者が所属する株式会社マクロミルののプロモーションにおいて、実際に起こった悪い事例で、「ある時期にリスティングのCPCが極端に上がり、CPAが悪化した」ことがあります。最初は原因が全く掴めませんでした。ただ、アクセス解析や他のWeb施策の結果をよく見てみると、原因が特定できました。
何が起こっていたかというと、弊社では第三者配信でディスプレイ広告を実施していたのですが、その際、クリエイティブには再検索を促すための「検索ボックス+検索キーワード」の画像を入れていました。これを実施してから、特定のキーワードからの流入が増えてたことがアクセス解析で分かったのですが、それがリスティング広告からの流入数にも影響していました。
- ディスプレイ広告の検索キーワードの画像には「ビッグキーワード」を使用
- 第三者配信では、能動的にキーワードを検索してくるリスティング広告と比べて、ユーザーの質が劣る
つまり、“CVへのモチベーションが低いユーザー”が、“単価の高いキーワード”を再検索で使用し、“リスティング広告で流入”したことにより、リスティング広告のCPCの上昇&CVRの低下 ⇒ CPAの悪化ということが起こっていました。
こういうことは、「ディスプレイ広告(他の広告媒体)」「アクセス解析(自社のデータ)」の情報がないとまず気付けなかったと思います。著者が「代理店への運用ノウハウ依存」「サイロ化した担当制」に否定的なのは、こういった経験が何度かあったからです。
必要なのはマネージャーではなく、ジェネラリスト
複数の施策が絡み合い、相乗効果を生むのが、Webマーケティングです。Webマーケティングには、各種Web広告、アクセス解析、アトリビューションなどの効果測定、SEO、オフライン広告、クリエイティブデザイン、コーディングなど、幅広い知見が必要になります。
例えば、「ディスプレイ広告の露出により検索が伸びてきたので、SEO対策してさらに成果を伸ばしたい」 → SEOの効果を最大限に高めるにはSEOコーディングの知見を持った人間がコーディングするのが最も成果に直結します(SEO+マークアップ言語の知識が必要)。しかし、コーディングができても、クリエイティブ(Webサイトの画像パーツ)が作れなかったらWebサイトは作れません(クリエイティブデザインの知識が必要)。
「複数の施策を打ったが、効果が分からないので明らかにしたい」 → まず、全ての施策のトラッキングできる環境を作る必要があります。トラッキング用のタグを、タグマネージャーなどを使って制御することもあるでしょう(タグマネジメント+HTMLタグ・jsタグの仕様理解が必要)。トラッキングができるようになったら、データを抽出し、データマイニングします(データサイエンティストとしての知識が必要)。その結果を受けて、次の打ち手を考え、広告代理店への的確な指示とコミュニケーション、ディレクションを行います(マーケターとしてのコミュニケーション・ディレクション能力が必要)。
上記に書いたようなことをできる人間が、Webマーケティングの幅広い知見を持つ、ジェネラリストです。つまり、「SEO担当」「デザイナー」「コーダー」「データサイエンティスト」「マーケター」の業務を理解し、ある程度1人でこなせる人間のことです。
マネジメント能力が高いだけではダメです。例え、人材に恵まれたチームだったとしても、各領域のスペシャリスト達と対等に話して、業務を推進するためには、現場レベルの高い知識が必要です。知識が浅い(もしくは古い)マネージャーでは、スペシャリスト達の相談相手になることも、サポートを行うことも、人を評価することもできないでしょう。
変化の速いWebマーケティングの業界では、各担当者が最新のノウハウやシステムを必死に理解しようとしています。そんな現場の担当者達の中では、自分の知識の浅さや古さはすぐにバレます。管理職であったとしても、日々更新される情報をキャッチアップし、自分の知識やスキルを磨くことも忘れないでください。何もしないということは、“停滞”ではなく“後退”です。
ディスプレイ広告×SEOの事例
バナーのコピーでSEOの流入キーワードを操作
ディスプレイ広告はテキスト広告と違い表現の自由度が高いので、例えばSEO対策しているキーワードをディスプレイ広告に利用することで、再検索の際のユーザーの検索クエリをある程度誘導できます。
通常、検索広告からの流入はSEOでは評価されません。しかし、再検索による流入はオーガニック検索の流入なので、SEOで良い効果(SEOキーワードのクリック率の上昇により)が期待できます。
- ディスプレイ広告実施以降の検索順位データ
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- もともと300位圏外だったキーワードを5位~1位に持ってくることができました。下のキーワード以外でも30個ほどのキーワードで5位以内にランクインしました。
- ただ、SEO施策(内部対策)も同時期に走らせており、そっちの効果が大きかったと思うので、これが全てディスプレイ広告の再検索の影響とは言えません。しかし少なからずいい影響が出ていたとは思います。
実施したSEO対策についてはこちらで詳しく説明しています(ほとんど内部対策しかやっていません)。
関連記事:SEO対策の実践方法と成功事例
このようにそれぞれの媒体が持つ特徴を理解していると、色々と施策の幅が広がるわけです。
学べる相手は傍にいるはず。
では、これらWeb施策を実践してくためのノウハウや知識をどこで学べばいいかと言うと、著者の場合はパートナーである広告代理店の担当者の方がこれにあたります。
「あなたは代理店との月に1回のミーティングを、結果の報告だけで終わらせていませんか?」
業界事情、新しい広告や分析手法、他社事例、聞かなければ出てこない、貴重な情報はたくさんあります。著者は、「情報収集(勉強)」を毎月のレビュー時に行っており、1回の打ち合わせが3~4時間かかることもあります。
各媒体を専門的に扱う方から色々教えていただくことで、Web施策全体の知見が身につき、間違いなく全体のWeb施策に役立っています。ぜひ、自分の担当を頼ってみてください。
これからのWebマーケター
従来の広告よりも効果測定が容易で、高い投資対効果(ROI)を求める広告主の要望に応えたインターネット広告は、今後も重要な広告媒体であることは間違いありません。
インターネット広告が登場してからまだ十数年そこそこですが、その変化は驚くべきスピードです。広告、ターゲティング、分析などの手法は次々に新しいものが生まれ、既存の手法も進化を続けています。
今後もマーケターや、広告代理店に求められるリテラシーはさらに高くなっていくでしょう。広告主(Web担当者)も広告代理店も、最新の情報をキャッチアップし、常に全体最適化を意識して各施策に取り組む必要があると感じています。
この記事の著者
広瀬 信輔(ひろせ・しんすけ)
マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。
1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。
2008年、株式会社マクロミルに入社。現在は同企業のオンラインマーケティング部門の責任者として、デジタルマーケティングを推進。
株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。
2017年、ディーテラー株式会社を創立。メディアプランニング、Web広告運用、SEO対策、Webサイト制作など、デジタルマーケティング領域のコンサルティング及びアウトソーシングサービスを提供。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティングを支援。
2021年、公正取引委員会 デジタルスペシャルアドバイザーを受嘱。デジタル市場における競争政策の的確な運営のために活動。
著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)
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